出産時の痛みを抑えることができる「無痛分娩」の関心が高くなっており、無痛分娩を受けてみたいと考える方は多いと思います。しかし、「どれくらい費用がかかるのかわからない」「高額になるのではないか」と心配しているのではないでしょうか。
無痛分娩では通常分娩に追加で費用がかかりますが、病院によって金額も異なります。本記事では、通常の出産にかかる費用やその内訳、無痛分娩の費用、出産手当金などの利用できる制度についても詳しく解説します。無痛分娩を受けたいという方は、出産に必要な費用を知り、無痛分娩の予算を計画してみてください。
費用がかかっても受けたい
無痛分娩のメリット
無痛分娩の一番のメリットは、やはり出産時の痛みが抑えられることでしょう。出産時は「鼻からスイカを出す」と例えられるくらい激しい痛みがあり、1/10~3/10程度まで抑えると言われています。無痛分娩の費用は通常分娩に追加で15~20万円が相場です。痛みに耐えられる自信がない方なら、費用をかけて痛みを抑えられるならその方が良いという方は多いでしょう。
また、痛みを我慢するよりも緩和した方がリラックスした状態で出産に臨むことができ、体力や気力の消耗も少なくてすみます。出産という貴重な体験をするにあたり、痛みに耐えるより余裕を持って赤ちゃんと対面したいという方もいらっしゃると思います。産後の体力の回復も早いため、授乳やおむつ交換などその後の育児に集中できるというのも無痛分娩のメリットです。
妊娠から出産までにかかる費用
まずは、出産前の妊娠した時点でかかる費用についてみていきましょう。妊娠したら、妊婦の健康状態と、赤ちゃんの成長発達が順調か確認する妊婦検診を受ける必要があります。妊娠初期は4週ごと、妊娠24週以降は2週ごと、妊娠36週以降は毎週で、約14回受診することになります。
妊婦健診の費用は1回3,000~7,000円で、検査の内容によって金額が前後します。特別な検査を受けると、1~2万円ほどかかります。保険適用ではありませんが、自治体から助成を受けることができ、最終的には自己負担が3~7万円になることが多いようです。
出産にかかる費用
無痛分娩にかかる費用が気になるけれど、その前に出産にどれくらいの費用がかかるのか詳しく知りたいという方も多いと思います。無痛分娩を行わず、自然分娩での出産を行った場合の費用をみてみましょう。厚生労働省の令和5年度「第167回社会保障審議会医療保険部会」の
「出産費用の見える化等について」によると、正常分娩の費用平均は48.2万円です。
出産費用(正常分娩)の推移
令和4年度の全施設の出産費用の平均は、48.2万円であった。
日本での出産は自然分娩も保険が適用されず、さらに無痛分娩の費用も自費になります。出産にかかる費用は基本的に一括で払う必要があるため、妊娠がわかったら出産までに用意しておく必要があります。
出産費用の内訳
出産費用の内訳は以下の通りです。
項目 |
平均値 |
入院料 |
112,726円 |
室料差額 |
16,580円 |
分娩料 |
254,180円 |
新生児管理保育料 |
50,621円 |
検査・薬剤料 |
13,124円 |
処置・手当料 |
14,563円 |
産科医療補償制度 |
15,881円 |
その他 |
28,085円 |
合計負担額 |
505,759円 |
※平成28年度国民健康保険中央協会の調査結果の妊婦負担額の平均値。(病院、診療所、助産所で出産した場合の合計)
入院料には、入院中の部屋代やベッド代、食事代などが含まれます。上記の調査結果の入院の平均日数は6日ですが、それよりも入院期間が伸びると価格が上がります。室料差額は、個室を希望した場合に発生する費用で、設備にもよりますが1日あたり1万円~2万円程度追加でかかります。個室を全く利用しない方も多いので、金額に差が現れやすい項目です。
その他の費用
その他に分類される費用としては、休日や夜間に出産した場合にかかる時間外加算、深夜加算があります。対象となる時間帯や加算される金額は病院によって異なりますが、3~6万円程になります。
また、上記の費用は正常分娩での内訳です。また帝王切開になる場合も金額が異なります。帝王切開の場合の出産費用平均は約60~100万円ほどですが、保険が適用となるため自己負担額を抑えることができます。
無痛分娩にかかる費用
無痛分娩の場合、通常分娩に追加して15~20万円ほどかかるのが相場です。無痛分娩の費用の内訳が明示されていることはあまりなく、基本的には「通常分娩に追加で⚪︎円」と表記されていることが多いです。内容としては、麻酔薬の薬剤代や麻酔の処置代、麻酔科医が管理を行うための費用などがかかります。
また無痛分娩には、自然無痛分娩と計画無痛分娩があります。自然無痛分娩は、通常分娩と同じように陣痛が始まったタイミングでの出産となり、出産前に麻酔を投与して痛みを和らげます。計画無痛分娩は、予め出産する予定日を決めておき、陣痛誘発剤を投与して陣痛を起こしながら麻酔薬を投与して出産を行います。どちらを選ぶかによって、出産にかかる時間や入院日数、処置などが異なり、結果的に必要な費用が変わってくることもあります。
追加でかかる費用はある?
無痛分娩とは、麻酔により出産時の子宮の収縮による痛みを抑える出産方法です。子宮の収縮は赤ちゃんを押し出すために起こっています。痛みを抑えると、子宮の収縮がわかりにくくなることで、赤ちゃんがなかなか出てくることができず、分娩時間が長くなる可能性があります。
分娩時間が長くなってしまうと、赤ちゃんを引っ張り出すため、鉗子分娩や吸引分娩などの処置が必要になることもあります。これらの処置は5,000円~1万円ほどかかりますが、保険適用となります。自然分娩でも分娩時間が長くなって処置が必要なこともあり、無痛分娩だからかかる費用ということではないですが、追加で必要となることがあると覚えておくと良いでしょう。
費用を抑えられる可能性はある?
無痛分娩の場合、痛みが抑えられることで気力や体力の消耗が抑えられ、出産後は体力の回復が早くなることが多いでしょう。病院の方針などにもよりますが、なかには入院の日数が短くなって入院費用が抑えられることもあります。計画無痛分娩の場合は、入院日や陣痛促進剤を投与するタイミングが決まっています。土日や深夜の出産となるリスクを減らすことができるため、時間外加算や、深夜加算が抑えられることが多いでしょう。
また、無痛分娩は産後の体力の回復が早いため、育児に集中したい、早めに職場復帰したい方にも選ばれています。無痛分娩自体の費用は変わりませんが、産後の動けない時間が短くなることで結果的に経済的になる可能性があります。
出産に関する手当
続いて出産時に利用できる制度について紹介します。出産にはかなりの費用がかかり、無痛分娩をする余裕がないと思っている方も諦めるのは早いかもしれません。手当を受け取ることで予算内に収まるということも多いと思います。
出産育児一時金
出産一時金は、各自治体から子ども一人につき一律50万円支給されます。国民健康保険に加入していて、妊娠12週以上で出産した方が受けられるのでほとんどの方が対象になるでしょう。
直接支払制度 |
医療機関に直接支払われる方法。 |
受取代理制度 |
医療機関へ直接支払われることを希望しない場合、被保険者が申請して受給する方法 |
出産後、市役所に申請をするため、産後2~3ヶ月後の受け取りになることが多いです。ただし直接支払制度を利用すると、健康保険から医療機関に直接支払われるため、まとまったお金を準備する必要がありません。利用できるかどうかは各自治体や医療機関によって異なるため事前に自治体に確認しておくのが良いでしょう。
出産手当金
企業に勤めている方は、出産のために仕事を休んで収入が得られなくなった場合に出産手当金を受け取ることができます。出産の42日前から、出産以後56日目までの期間のうち会社を休んだ期間が対象として、給与の約2/3の金額が支給されます。正確には、1日あたり、支給開始日以前の12ヶ月間の月額の給与の平均額を30で割った金額の2/3になります。
基本的には、仕事を退職していると基本的には支給されませんが、出産手当金の支給期間内の退職であれば支給対象となるなど条件があります。出産手当金を受け取ることができるか確認して予算計画を立てましょう。
まとめ
無痛分娩には、出産時の痛みを抑えられるのはもちろん、体力の消耗を抑えられるなどメリットがたくさんあります。費用をかけても無痛分娩を受けたいという方は多いでしょう。
無痛分娩の費用は病院によって異なりますが、麻酔科医が常時いるかなど体制も異なります。金額だけをみて安易に選ぶのはおすすめしません。無痛分娩の実績が多いか、深夜に陣痛が来ても無痛分娩に対応してくれるかなど確認をして選びましょう。条件によって出産の助成金も受け取ることもできます。納得の行く出産のために、無痛分娩を受けたいと思ったら、予算を決めて計画を立ててみることをおすすめします。