Article後陣痛とは?出産後に起こる後陣痛の原因や緩和方法を解説
コラム 2025.01.22

出産が終わってやっと陣痛から解放されたのに痛みがあってつらいという話を聞いたことはないでしょうか。出産後に起こる後陣痛は、体が元の状態に戻る過程で必要なことですが、産後の体には負担となります。出産で疲れた産後にまで痛みがあるのは、つらそうだと心配されている方もいるでしょう。
後陣痛がどんな痛みなのか、原因などを、本記事で詳しく解説します。うまく痛みを軽減させる方法や、後陣痛と間違いやすい病気の兆候などをご紹介しますので、ぜひ参考にして産後をより楽に過ごしてください。
後陣痛とは?
後陣痛は、赤ちゃんと一緒に胎盤などが娩出された後、子宮が急速に元の大きさまで小さくなることで起こります。もともと握り拳くらいの大きさの子宮が、妊娠と赤ちゃんの成長に伴って35cmくらいまで大きくなります。
出産した後も妊娠中のように子宮が大きくなったままだと、胎盤が剥がれたところから出血をしてしまいます。そのため子宮は元の大きさに戻る「子宮復古」という現象が起こりますが、順調に産後の体が回復しようとしている望ましい過程です。
後陣痛はどんな痛み?痛みの場所は?
痛みの感じ方には個人差があり、全く感じない、軽い生理痛くらいの痛みという方もいます。なかには、痛みが強く本陣痛よりもつらかったという方もいらっしゃいます。痛みの強さと合わせて、本陣痛のように「赤ちゃんが出てくるための痛み」といった励みがないことで精神的にストレスを感じることも少なくありません。
後陣痛は、腹部の特に下の方に痛みがありますが、腰やお尻の奥が痛いと感じる方もいます。後陣痛の特徴として、母乳を飲ませたときに痛みが強くなる傾向があります。一方で立ち上がったときなどお腹に力が入ったときの痛みは、会陰切開や帝王切開をしたときにできた傷の痛みのことが多いです。
後陣痛はいつまで続く?
後陣痛は、早いと出産直後から始まります。産後3日目くらいまで続き、産後4日目頃に痛みが落ち着いてくることが多いでしょう。そのため、まだ産院や病院に入院しているときに、痛みのピークを経験します。我慢をせずに医師や助産師に相談すると良いでしょう。
ただし、子宮が妊娠前の元の大きさに戻るのは、産後6週〜8週間ほどかかります。痛みが落ち着いても、産後1カ月くらいまでは完全になくならず、痛みが続くとも少なくありません。痛みが強いと日常生活にも影響が出てしまう可能性があるため、対処が必要です。
後陣痛が強くなる原因は?
後陣痛が強くなる原因は以下の通りです。
・経産婦
・双子など多胎妊娠
・羊水過多や巨大児
・子宮収縮剤を使用している
・授乳(母乳育児)
初めて出産をした初産婦よりも、出産経験が2回以上ある経産婦の方が後陣痛の痛みが強くなりやすいと言われています。初産に比べて、子宮が大きくなっている場合や、それに伴い、子宮収縮力も強くなっている場合が多いためです。双子の場合や、羊水過多、巨大児の場合も子宮が大きくなっていることで後陣痛が強くなる傾向があります。
産後の出血量が多い場合は、子宮収縮剤を投与することもあり、薬の影響で後陣痛が強く出ていることもあります。
また、授乳時や授乳が終わったときに痛みが出やすくなります。母乳をあげる際に乳頭が刺激されることで、乳汁の分泌に関わるオキシトシンというホルモンが分泌されます。オキシトシンは子宮収縮を促す役割があり、出産の際の陣痛時にも分泌されているホルモンです。
後陣痛の緩和方法は?
出産によって体力や気力を消耗した後の痛みはつらいでしょう。産後は、赤ちゃんに母乳をあげたりお風呂に入れたりと育児を覚えていく必要もあり、体を回復させるためにも後陣痛をなるべく軽減させたいものです。次に、後陣痛を和らげる方法をご紹介します。
子宮の周りを温める
子宮の周りを温めることで血流が良くなり、痛みが緩和されやすくなります。カイロや湯たんぽを使うと良いでしょう。産後は湯船に浸かることも体に負担になり、1カ月健診などで問題ないとされるまでは入ることができません。産後の体調に問題なければ、出産翌日からシャワーに入ることができる場合が多いため、シャワーを使って温めましょう。
ただし、長時間にわたって温めすぎると低温やけどを起こしてしまうことや、子宮収縮が弱くなってしまうことで出血量が増えてしまう可能性があります。カイロを貼ったままで寝てしまうなどの温めすぎに注意して、体を冷やさないような腹巻きなどを活用するのがおすすめです。冷たい飲み物は体の内側から冷やしてしまうため、温かい飲み物を選ぶと良いでしょう。
マッサージ
痛みがある場所をマッサージしてみましょう。ただし、強く押しすぎるとかえって痛みが強くなってしまう可能性があります。心地良いと感じるくらいで、さするようにやさしくマッサージしましょう。
またマッサージするときは、楽な姿勢で深呼吸しながら行うといいでしょう。マッサージしているときに限らず、横になっている場合でも、仰向けや横向きなど姿勢を変えてみて過ごしやすい姿勢を探してみてください。クッションの利用もおすすめです。
リラックスして過ごす
そもそも出産では気力や体力をかなり消耗しており、フルマラソンを走ったくらい疲れているとも言われています。そして、産後は、子宮を含めて徐々に体が元に戻ろうとしている状態であるため、体をしっかりと休めることが重要です。
それでも、慣れない赤ちゃんのお世話で疲れたり、夜に眠れなかったりすることも珍しくありません。体に負担になることはできるだけ控えてリラックスして過ごしましょう。好きな音楽を聞くなど自分が楽しいと思えることを試してみてください。
後陣痛についてのよくある質問
痛みの強さなどは個人差があります。体を温めてみても痛みが軽くならないと、薬を飲んでも良いか、他の病気ではないかと心配になるかもしれません。ここでは、後陣痛に関してよくある質問をまとめましたので、参考にしてください。
帝王切開の場合でも後陣痛は起こる?
帝王切開の場合でも、出産前は子宮が大きくなっており、元に戻ろうとするのは経膣分娩と変わらないため後陣痛が起こります。ただし、帝王切開の場合は切開した傷の痛みがあり、手術後2〜3日で痛みのピークが来ることが多いです。後陣痛と同じタイミングで痛みが強くなり、どちらの痛みがわかりにくいということも多いでしょう。
どちらの痛みであっても対処方法があり、我慢しすぎることはありません。つらいときは医師に相談をしましょう。
薬は飲んでも良い?
痛みを我慢しすぎると、かえって体の回復を妨げます。痛みが強いときは、状況に応じて薬を飲むこともあるでしょう。
妊娠中に赤ちゃんが子宮にいたときと違って、血液によって薬の成分が運ばれることはありません。しかし、母乳を介して赤ちゃんに影響してしまうこともあるため、市販薬を自己判断で使用することは避けましょう。母乳へ移行しにくい鎮痛剤もあるため、後陣痛が強い場合は、我慢せずに医師に相談してください。
また、産後の薬として病院から子宮収縮剤を処方されている場合があります。子宮の回復が順調と思われる場合には、子宮収縮剤の薬を中止することで後陣痛が改善されることもあります。
注意が必要な痛みは?
後陣痛は生理的なものですが、痛みが強い場合や長く続く場合、他にも症状がある場合は病気が隠れている可能性があります。
腹痛だけでなく、発熱や悪寒、倦怠感が強いなど風邪のような症状があるときは感染症の可能性があります。特に、悪露(膣からの排出物)の量が多いときや臭いが気になるときは、子宮内膜炎、子宮筋層炎症などの子宮の感染症が疑われます。
特に分娩後は、本来子宮内に存在する常在菌であっても、免疫力の低下や出産の影響で感染しやすくなるため、早めに医師に相談しましょう。
まとめ
後陣痛は、子宮が元の大きさに戻り体が回復していく過程で起こるため、望ましいことであり予防方法はありません。しかし、産後に痛みが続くことはつらいことです。長く続くことで退院後の生活に支障が出てしまいかねません。少しでも和らげるように対処することをおすすめします。
また痛みが強い場合や長く続いている場合は、子宮内の感染症など病気が隠れている可能性もあります。我慢せず、医師に相談しましょう。後陣痛を少しでも和らげて、赤ちゃんのお世話に集中する、リラックスするなどより過ごしやすい産後の生活を送ってください。