Article妊娠後期の不調はなぜ起こる?つわりのような吐き気や胸焼けを和らげる方法
コラム 2025.01.22

妊娠後期に入ってつわりの時期は終わったはずなのに、吐き気や胸焼けなどつわりのような症状が出るということはありませんか。なかには症状がつらくて夜に眠れない、食事が取れずに痩せてしまうという方もいらっしゃるでしょう。妊娠後期のこれらの症状は珍しいことではありません。
本記事では、妊娠後期に現れるつわりに似た症状について解説します。対処方法や注意点についても紹介していますので、ぜひ症状を和らげるために参考にしてください。
妊娠後期に現れるつわりのような症状とは?
通常、つわりは妊娠初期の4〜6週ごろから始まり、妊娠12〜16週頃にはなくなります。妊娠初期のつわりは約8割の妊婦が経験するとされています。しかし、安定期と呼ばれる妊娠中期には特に症状もなく落ち着いていたという方も多いでしょう。
いよいよ妊娠を控えた妊娠後期になって、吐き気や胸焼け、頭痛などのつわりのような症状が出て驚いている方もいらっしゃるかもしれません。妊娠後期は、ホルモンの変化や、お腹が大きくなって胃や腸が圧迫されることや消化機能が低下することで、不調を来しやすくなります。
妊娠後期に現れる症状は以下の通りです。
・吐き気(嘔気)
・胸焼け
・胃痛
・嘔吐
・頭痛
・眠気
個人差はありますが特に吐き気や嘔吐などの消化器症状があるという方が多いでしょう。
妊娠後期に症状が起きる原因
妊娠後期につわりのような症状が起きるのは、ホルモンの変化やお腹が大きくなることが原因であるとお伝えしました。ここでは、どのようなメカニズムで起きているのか詳しく解説します。またストレスや胎動など他にも症状を誘発する要因についても紹介します。
赤ちゃんが成長して子宮が大きくなる
もともと子宮は、握り拳くらいの大きさしかありません。しかし、赤ちゃんが成長するにつれてどんどんと大きくなります。大きくなった子宮の上部は、みぞおちの付近まで上がってきており、胃が持ち上げて圧迫している状態となっています。そのため、胃液が食道に逆流しやすくなり吐き気などの症状を起こしやすくなります。
また胃が圧迫されることで、食べ物を消化する機能も低下します。食べた物がうまく消化・吸収できずに、通常よりも長い時間、胃や腸に留まっていることも症状が出る原因です。
女性ホルモンの分泌が増える
妊娠が進むにつれて、特に妊娠後期はプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌量が増えます。プロゲステロンは、排卵と子宮収縮を抑制し、妊娠を継続する上でとても重要なホルモンです。しかし、プロゲステロンによって胃腸の運動機能が弱まり、消化機能が低下してしまいます。
また、食道には胃酸が逆流しないように食道括約筋が弁のような働きをしています。プロゲステロンは食道括約筋が緩みやすくする作用があり、胃酸の逆流を起こして胸焼けや吐き気のような症状が出やすくなります。
プロゲステロンは眠気を引き起こします。また妊娠後期は、子宮の血流を増やす役割のあるエストロゲンというホルモンの分泌量も増えます。エストロゲンの働きによっても、夜中の眠りが浅くなってしまうことがわかっています。
胎動
胎動があると、赤ちゃんが元気だと成長が感じられて嬉しくなることも多いと思います。しかし、妊娠後期になると、赤ちゃんは大きくなり子宮の中が狭くなってしまうため、動きが激しくなりがちです。お腹の上から赤ちゃんの手足の形がわかるくらい動くこともあります。
腹の中で激しく動き回ることで、腹部への刺激となり、吐き気のような症状につながってしまいます。また、胎動が気になってしまい、夜も眠れずなかなか疲れが取れないという状況にもなります。
ストレスや不安
妊娠後期は、お腹も大きくなり過ごしにくくなっているでしょう。先ほど解説した女性ホルモンのプロゲステロンやエストロゲンの影響もあり、自律神経が乱れて不安を感じやすかったり、イライラしやすかったりします。間近に控えた出産へのプレッシャーもあり、ストレスが高まるという方は少なくありません。
ストレスが増えるとコルチゾールというホルモンが分泌される影響で、胃酸が過剰に分泌されます。胃の粘膜も抵抗力が弱まり、胃が荒れやすく胃痛や不快感につながってしまいます。
いつまで続く?
妊娠中は、時期を問わず体調が変化しやすい状態ですが、妊娠中期は比較的症状がなく安定していることが多いでしょう。妊娠後期のつわりに似た症状は、妊娠8カ月以降に現れやすい傾向にあります。
症状が治ってくる時期は、妊娠36週以降の臨月に入った頃です。赤ちゃんが子宮口の方へ降りてくるため、胃への物理的な圧迫が軽減されることが影響しています。ただし、女性ホルモンの分泌量は低下せず、症状が治る時期には、個人差があります。
妊娠後期のつわりに似た症状への対処方法
妊娠後期は、嘔気や胸焼けなどの消化器症状が特に出やすい状態であることがわかりました。つまり、消化に良いものを食べるなど、食べ方を工夫することで症状が改善されやすくなります。また、胃酸分泌に影響があるストレスにも対処することで、頭痛や夜に眠れないといった症状が良くなることも期待できるでしょう。
食事は少量をわける
一度にたくさんの食べ物が胃の中に入ると消化するのに時間がかかります。なんとか消化しようとして胃酸の分泌が活発になるため、胃への負担はさらに大きくなります。ただし空腹の状態が続くことでも、胃酸は過剰に分泌されるため、胃が痛くなったり吐き気を起こしたりします。
食事の量が少し減っても心配しすぎる必要はありません。しかし、食事が取れない状態が続くと痩せて、体力も落ちてしまいます。妊娠後期は赤ちゃんの発育のためにもしっかり栄養を蓄えたい時期です。1回あたりの食事量を少なくして、食事回数を1日5〜6回に増やし、トータルで栄養が取れるように意識しましょう。
消化に良いものを食べる
食べ物は、胃に刺激となるものは避けて、消化に良いものを選ぶと良いでしょう。
消化に良い食材
・おかゆ
・うどん
・豆腐
・ヨーグルト
消化に悪い食べ物
・脂っこい食べ物
・きのこやごぼう、海藻など繊維が多い食材
・ソーセージやベーコンなどの加工食品
胃に刺激を与えるもの
・冷たいもの
・香辛料
・梅干し
・柑橘類
同じ食べ物でも、加熱して柔らかくしておくと、より消化しやすくなります。特に妊娠中は免疫力が低下しています。消化のしやすさはもちろん、食中毒にならないようにするためにも、生物は控えてよく火を通して食べると良いでしょう。
寝るときは左を下にする
食後は胃酸の分泌が活発になっています。すぐに横になると胃酸が食道に逆流して気分が悪くなる可能性があるので、横にならず座って過ごしましょう。また寝る3時間前までに食事を済ませておくことが理想的です。
胃の調子が良くない場合、横になるときは体の左側を下にした姿勢が良いでしょう。左側を下にすることで胃酸が逆流しにくくなります。クッションなどをうまく活用して自分が楽だと思う姿勢で過ごしましょう。
水分の取り方に注意する
嘔吐などの症状がある場合は体から水分が失われ、脱水症状を起こしやすくなっているため、水分補給が大切です。しかし、一度に大量に水を飲むと、胃に負担がかかってしまいます。特に、食事の直前や直後に水を大量に飲むと消化を妨げてしまいます。水はこまめに飲むように心がけましょう。
コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインは、胃酸の分泌を促す働きがあります。ノンカフェインのお茶を選ぶと良いでしょう。温かい牛乳は胃の粘膜を保護してくれるためおすすめです。
ストレス解消してリラックスする
妊娠中は体の変化など慣れないことも多いでしょう。好きな音楽を聴く、感動的なドラマや映画を観るなど自分が楽しいと思えることをしましょう。出産や赤ちゃんのことを考えてプレッシャーに感じるようであれば、無理をせず関係ないことをして気を紛らわせるのが良いでしょう。ポジティブな気持ちになれる場合は、生まれてくる赤ちゃんの名前を考える、理想的な出産を思い描いておくことで心の準備にもなります。
湯船にゆっくりつかってリラックスするのもおすすめです。妊婦でも使用できる入浴剤もあるため、お気に入りの香りを探してみると良いでしょう。ただし、妊娠中はのぼせやすく、症状があるときは悪化する可能性もあるため長湯は控えてください。散歩などの軽い運動をすることもリフレッシュにおすすめです。休息も大切ですので、疲れたらきちんと休むようにしましょう。
妊娠後期に症状が出たときの注意点
症状があると、薬を飲んでも良いのか、何か他の病気ではないかと心配になることもあるでしょう。ここでは、妊娠後期に症状が出た場合に対処する上での注意点を説明します。
自己判断で薬を飲まない
症状があってつらいときは薬を使用することもあります。ただし、胎盤を通じて赤ちゃんに薬が送られてしまう危険性があるなどの理由で、妊娠中には内服できない薬もあります。普段から胃薬を使用していても、自己判断での服用は避けて、かかりつけの産院や病院で処方してもらいましょう。
薬は飲み始めるときだけでなく、中止するときも注意が必要です。胃酸の分泌を抑える薬は中止することで、それまで抑えられていた分の胃酸が急に増えてしまうこともあります。薬にはそれぞれ副作用もあるので、医師に症状を相談して服用を管理することをおすすめします。
症状が強いときや続く場合は病院で相談を
症状がなかなか改善しない場合や、吐き気や胸焼けだけでなく胃痛や下腹部痛がある場合は注意が必要です。胃や腸の病気になってしまっている場合や、別の病気が隠れている場合もあります。例えば空腹時に胃の痛みが強いと胃炎や胃潰瘍が疑われます。
また、どこが痛いのか場所がわかりにくいときは、胃以外の部位の痛みかもしれません。胃の病気の場合はみぞおちの少し左の方が痛くなりますが、下腹部が痛いときは、腸の病気や泌尿器系の病気、子宮の痛みの可能性があります。子宮から来る痛みの場合、臨月に入っていると陣痛の前に起こる前駆陣痛の可能性もありますが、切迫早産など緊急性が高い痛みである可能性もあります。違和感があれば、すぐにかかりつけの病院に相談をしましょう。
まとめ
出産を控えて緊張したり不安に感じたりしている妊娠後期につらい症状があるのは大変かと思います。吐き気や胸焼けなどの症状が強いと、その影響で食事が食べられない、夜に眠れないといったことにもなりかねません。
症状を緩和できると不快感が改善されるだけでなく、体力をつけることができ、出産に向けて心の余裕も生まれやすくなるでしょう。薬を飲むことも医師に相談して症状の改善に上手に活用できれば、悪いことではありません。本記事を参考に、無理をせず症状を和らげて、安心して出産に備えてください。