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Article妊婦健診で尿蛋白が陽性になったらどうする?原因や対策方法を解説

コラム 2024.12.15

検査を受ける妊婦

 

妊婦健診で毎回のように行う尿検査。異常値がないか気にしていたら、尿蛋白が陽性(+)になって驚いているという方もいらっしゃるかもしれません。尿蛋白の有無は、妊娠によって腎臓へ負担や病気の発見のために検査しています。

 

妊娠による生理的な変化やストレス、過労などが影響していることもあり、一時的な場合もあるでしょう。しかし、尿蛋白が陽性の状態が続いている場合は、病気が隠れていることもあります。

 

本記事では、そもそも尿蛋白が陽性(+)になったらどういうことが考えられるのかを解説します。日常生活で気をつけることも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

尿蛋白とは?

尿蛋白の検査項目で陽性の判定が出ていることは、検査項目の通り尿に蛋白が混ざっている状態です。もともと蛋白質は体に必要な栄養素として身体に取り込まれるため、通常尿にはほとんど排泄されません。

 

検査の結果 陰性(−) 弱陽性(±) 陽性(1+、2+、3+、4+)
状態 尿に出ている蛋白質が15mg/dl以下。正常な状態。 尿に微量(15〜30mg/dl)の尿蛋白が出ている状態。 尿に30mg/dl以上蛋白が出ている状態。数字が大きいほど、検出される蛋白の量も増え、注意が必要。

 

妊娠中は生理的に尿蛋白が出やすくなるため、検査で陽性となったのが一度きりであればしばらく様子を見ることが多いでしょう。しかし、尿蛋白が陽性の状態が続く場合、検出される蛋白質の量が多いと注意が必要です。

 

妊娠中の尿蛋白が出たときに疑われること

尿蛋白が陽性の場合、妊娠高血圧症候群や腎臓病などの病気になっている可能性があります。進行すると、胎児の発育に影響を与えたり、早産となったりするリスクが高まるため、早期に治療を開始する必要がある場合もあります。ここでは、尿蛋白が陽性となる原因について解説します。

 

過労やストレスなど日常生活で無理をしている

妊娠中は生理的に尿蛋白が陽性になりやすく、尿蛋白が陽性であっても病気とは限りません。過度な運動や過労、風邪、ストレス、睡眠不足などが原因で起こることがあり、治療が必要ないことも多いでしょう。

 

尿蛋白が陽性の状態が続いていないか、時間をおいて再検査します。ただし、病気でなかったからと言っても、身体に負担がかかっている状態です。悪化して病気にならないようにするために、過労やストレスの多い状態を避ける、十分な睡眠を取るなど生活を見直しましょう。

 

腎臓機能の低下

腎臓にある糸球体は、血液をろ過して尿をつくり老廃物や余分な栄養素を排泄する役割をしています。妊娠中は、妊婦自身だけでなく胎児の老廃物の排泄も必要になります。糸球体でろ過する血液量は、妊娠前に比べて約50%も増加すると言われており、それだけ腎臓の仕事も多くなります。

 

加えて子宮によって腎臓が圧迫されるなど、腎臓に負担がかかりやすい状態です。妊娠前には腎臓に病気がなかった方も、妊娠をきっかけに腎臓の機能が低下しやすくなります。腎臓機能が低下すると、赤ちゃんの発育不全、早産となるリスクが高まります。

 

妊娠高血圧症候群

尿蛋白が陽性となった場合、腎機能の低下と合わせて注意が必要なのが高血圧です。妊娠20週以降に発症した高血圧は、「妊娠高血圧症候群」といいます。日本産婦人科学会によると、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上またはその両方が見られる場合に診断され、妊婦の20人に1人の割合で発生します。

 

妊娠高血圧症候群になりやすい人は以下の通りです。

・妊娠前から血圧が高い

・糖尿病や腎臓病などの持病がある

・多胎妊娠

・15歳以下の妊娠や35歳以上の妊娠

・痩せすぎている、太りすぎている

・家族に高血圧の人がいる

 

妊娠高血圧症候群は、赤ちゃんの発育不全や機能不全、子宮壁から胎盤が剥がれる常位胎盤早期剥離などを生じるリスクが高まる病気です。

 

軽症の場合の治療は食事の管理が中心となります。しかし、重症になると入院をして血圧を下げるための薬を点滴や内服で投与することになります。トイレ以外はベッドで過ごすなど安静にする必要がある場合もあり、管理も大変になるため早期に発見して治療を開始することが重要です。

 

食生活で気をつけること

尿蛋白が陽性の場合や、すでに腎臓の機能低下、高血圧と診断されている場合、重要なのは身体に負担がかかりにくい食生活を送ることです。特に、塩分の摂りすぎや蛋白質の摂り方、食べ過ぎに注意しましょう。

 

そして、葉酸や鉄分など妊娠中に必要な栄養素をとり、バランスの良い食事が基本です。ただし、妊娠の経過や病気の有無によっても異なるため、主治医とよく相談しましょう。

 

塩分の摂りすぎに注意する

塩分を過剰に摂取すると、血液中のナトリウム濃度が高まることで血液量が増え、血圧が上がります。また、塩分は腎臓で処理され尿として排泄を行うため、塩分の摂りすぎは腎臓に負担をかけます。

 

厚生労働省では、妊婦1日の塩分摂取量を6.5g未満としています。高血圧と診断されている場合などは、医師からさらに控えるように個別で指導されていることもあるでしょう。

 

なるべく薄味を意識して、血管や腎臓への負担を減らしましょう。しょうゆは減塩しょうゆを選ぶのがおすすめです。こしょうなどの香辛料、お酢や柚子、出汁など塩分の入っていなくとも満足できる味付けを探してみてください。また、加工食品には塩分が多く含まれているので摂りすぎに注意します。

 

蛋白質の摂りすぎに注意する

尿蛋白が陽性であるということは、腎臓では蛋白質が処理しきれず負担がかかっている状態です。食事から蛋白質の摂りすぎることがないように注意しましょう。

 

ただし、蛋白質は赤ちゃんの臓器など体をつくるために欠かせない栄養素です。不足しても良くないため、摂取目安量を守りましょう。妊娠中の蛋白質の摂取量の目安は、1日あたり75〜110gです。血圧や腎臓の状態や妊娠週数によっても異なるため、不明点があれば医師に確認をしましょう。

 

動物性蛋白質と植物性蛋白質をバランスよく摂るように意識し、バランスの良い食事の摂取を心掛けましょう。

 

食べ過ぎに注意し適切な体重管理を行う

つわりでなかなか食べられない、食の好みやライフスタイルが変化してついつい食べすぎてしまうこともあるでしょう。体重が増えることで腎臓や血管への負担も増すため、食べすぎには注意し、適切に体重管理を行います。

 

ただし、無理なダイエットをして急激に減らすのも急激に増やすのも良くありません。妊娠中期〜後期で体重増加しないよう気にして食事の量を減らすと、赤ちゃんへの栄養素の不足や発育不全になることもあります。1週間に300〜500g程度の体重増加が理想とされていますが、もともとの体重や妊娠の経過にもよるため、医師の指示に従って、適切に体重管理を行いましょう。

 

日常生活の過ごし方の注意点

尿蛋白が陽性となった際、ストレスや過労などの一過性の場合は、まずは元となる原因の改善に努めるのが大切です。継続して尿蛋白が陽性となっている場合は、運動などに制限があることもあります。医師の指示に従って無理はしないようにしましょう。

 

適度な運動

つわりやお腹が大きくなるなど身体の変化や、産休に入って生活スタイルが変わることで運動不足気味という方もいらっしゃるかもしれません。運動不足は、妊娠中の高血圧や腎臓の機能低下を招く可能性があるため、適度な運動を心がけましょう。

 

ただし、妊娠中は、身体をひねるなど子宮を圧迫する動きやバランスを崩すような動きはできません。危険なスポーツは避け、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を行うと良いでしょう。自己流ではなく、マタニティヨガやマタニティスイミングに通うなど専門の人から教えてもらうのもおすすめです。

 

過度な運動や過労はかえって腎臓に負担を与えます。妊娠時期によっては、早産や流産のリスクを高めるため、激しい運動は避けましょう。妊娠高血圧症候群が重度になると安静が必要で運動できないこともあります。必ず主治医に相談して、自分にあった運動を取り入れましょう。

 

ストレスを減らし十分な睡眠をとる

ストレスを感じたり、睡眠不足が続いたりすると交感神経を刺激し、血管が収縮することで血圧の上昇を招きます。身体に負荷のかかる作業がある、夜勤など不規則な仕事をしているなどの場合は、自分が思っているより疲れているかもしれません。産休に入って家で過ごす場合も、生活の変化によってもストレスを感じることもあります。

 

仕事や育児で忙しくいつも疲れている、よく体調を崩す、なかなか寝付けないという状態が続いている場合は、要注意です。十分な睡眠や休息が取れるように生活スタイルを見直しましょう。

 

妊婦健診の定期的な受診

妊娠高血圧症候群や腎臓病は、自覚症状がないことが多く、妊婦健診で発覚するケースも少なくありません。発見後早期に治療を開始することで、妊娠や出産に大きな影響を与えなくて済む場合もあります。「症状がない」「前回は検査に異常値がなかった」と安心するのではなく、妊婦健診は決められた期間で定期的に受診するようにしましょう。

 

また、尿検査を行う際は、「中間尿で検査」「起床時の尿を取るように」などの指示があるでしょう。排尿直後の尿は、膣の分泌物が混ざって偽陽性になることがあります。また、安静時の腎臓の働きを正確に知るため、睡眠から起きてすぐの尿たんぱくを確認しています。正確な検査結果のためにも、正しい検査方法に沿って提出しましょう。

 

まとめ

尿蛋白が陽性でも、一度きりであれば病気でないことがほとんどです。とはいえ、妊娠中は胎児と妊婦2人分の栄養素を取り込み排泄する必要があるため、腎臓や血管などの臓器に負担がかかりやすい状態です。問題なかったからといってそのままにするのではなく、定期的に妊婦健診を受けて異常がないか確認をしましょう。

 

そして尿蛋白が陽性の状態が続く時は、腎臓の機能の低下や高血圧が心配な状態です。助産師や医師の指示に従って、塩分やカロリーの摂りすぎに注意しバランスの良い食事や、適度な運動、ストレスの少ない生活を過ごしてください。

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