Articleお腹のなかの赤ちゃんが栄養を取り込む仕組み|胎内環境をよくする習慣
コラム 2024.12.15
胎児が母体から胎盤を通じて栄養を受け取っていることはよく知られていると思います。胎盤が形成し始める妊娠7週目ごろと言われていますが、それまではどのようにして栄養を受け取っているのでしょうか。
胎盤ができるまでは、卵黄嚢(らんおうのう)が赤ちゃんの栄養を送る役割を担っています。
本記事では、妊娠周期に沿ってお腹のなかの赤ちゃんが母親から栄養を受け取る仕組みについて解説します。「つわりがひどくてあまり食事を取れていないけれど赤ちゃんに影響がないか心配」「薬は飲んでもいいのか」などの疑問にもお答えします。赤ちゃんがすくすく育つよい胎内環境を整えるためにできることについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
赤ちゃんはどうやって栄養をもらう?
まずは赤ちゃんがどのようにして母親から栄養を受け取っているのか仕組みを見てみましょう。胎盤ができる前の卵黄嚢と呼ばれる栄養が詰まった袋から受け取っている時期と、胎盤から栄養を受け取れるようになった時期に分けて解説します。
卵黄嚢と胎盤がそれぞれ機能している時期や超音波エコー検査で確認できる時期は以下の通りです。
妊娠週 | 卵黄嚢(らんおうのう) | 胎盤 |
妊娠5〜6週目 | 卵黄嚢が超音波エコーで確認できる | |
妊娠7週目 | 胎盤が形成し始める | |
妊娠8〜9週目 | 卵黄嚢が最大の大きさ(直径約9〜10mmほど)になる | |
妊娠10週目 | 胎盤が超音波エコーで見え始める | |
妊娠12〜13週目 | 卵黄嚢は役目を終えて徐々に小さくなる | |
妊娠15〜16週目 | ほぼ完成 |
卵黄嚢から栄養を取り込む時期
胎児になる前の赤ちゃんは胎芽と呼ばれ、この時期は卵黄嚢(らんおうのう)という栄養が詰まった袋から栄養を吸収しています。
卵黄嚢は、妊娠5週目後半から6週目前半くらいに超音波エコー検査で確認できるようになります。初期の白いリング状の陰影として写るため、「ホワイトリング」「エンジェルリング」とも呼ばれ、聞いたことがある方も多いかもしれません。卵黄嚢は、胎盤が作られるに連れて徐々に小さくなり、妊娠12〜13週頃には役目を終えます。
医師に「卵黄嚢が見えない」「卵黄嚢が大きい」と言われると心配になるかもしれません。初期の卵黄嚢は小さく胎芽と重なって確認できないこともあります。卵黄嚢が大きいと卵黄嚢にある栄養を赤ちゃんが受け取れない可能性もありますが、そもそも卵黄嚢の大きさには個人差があります。医師は卵黄嚢の大きさだけでなく、胎嚢や胎児の心拍など総合的に経過を見ているため、心配なときは都度確認しましょう。
胎盤から栄養を供給する時期
胎盤は妊娠7週目ごろに形成し始め、妊娠10週目ごろに超音波エコーで確認できることが多いでしょう。赤ちゃんが大きくなるにつれて栄養もたくさん必要になるため、胎盤も大きくなり妊娠16週頃に完成します。
胎盤と赤ちゃんは臍の緒(臍帯)で繋がっており栄養を送っています。母体の血液の全ての物質が送られるかというとそうではありません。胎盤がフィルターのような役割を果たし、分子の大きい有害な物質が胎児に届かないようになっています。
胎盤や臍の緒の役割は以下の通りです。
・胎児が母体から酸素や栄養を受け取る
・分子の大きい有害なものが胎児に送られないようにする(フィルター)
・老廃物や二酸化炭素を母体へ送り返す(排泄)
胎児はまだ自分で呼吸ができないため、胎盤と臍の緒を通して母体の血液から酸素を取り込んでいます。胎盤や臍の緒は、必要なものを取り込むだけでなく、二酸化炭素や老廃物を母体に送り返す排泄の役割も果たしています。
赤ちゃんに栄養を届けるには
赤ちゃんがすくすくと育つためには、母体からの栄養供給が欠かせません。胎盤ができる妊娠15週目以降は、特に意識して栄養を摂るようにしましょう。
また、栄養は母体の血液から胎盤や臍の緒を通じて送られるため、血流をよくすることも大切です。冷えやストレスに注意して、体の巡りをよくして体内環境を整えましょう。
バランスのよい食事を心がける
妊娠中は、胎児に栄養や酸素を送るために血液量が増加し続けるため、鉄分は欠かせません。葉酸は細胞の分裂やDNAの合成、成熟に関わり、赤ちゃんが成長するために大事な栄養素です。葉酸が不足すると神経管閉鎖障害や早産のリスクが高まるため、積極的に摂取しましょう。
妊娠中に積極的に摂りたい栄養素は以下の通りです。
・葉酸
・たんぱく質
・ビタミン
・鉄分
・亜鉛
・カルシウム
・食物繊維
ただし、たくさんの栄養を摂るために食事を食べすぎると妊娠中の肥満や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の原因となります。医師の指示に従って体重をコントロールすることも大切です。
体を温める
妊婦の体が冷えて血流が悪くなると、赤ちゃんに栄養が届きにくくなるため、できるだけ体を冷やさないように注意が必要です。首や手首、足首など「首」とつく部分や子宮、骨盤周りは冷えやすい箇所です。ストールや腹巻きなどを使って冷えないように工夫しましょう。
湯船に浸かって温めるのもおすすめです。妊娠中はのぼせやすいため、40℃くらいまでの温度で湯船に浸かる時間は15分程度にとどめるのが良いでしょう。
体の内側からも冷やさないように心がけ、冷たい飲み物は控え、できるだけ温かい飲み物を選びましょう。トマトやキュウリなど夏が旬の野菜、白砂糖や白米など精製されたものは体を冷やしやすい食材です。生姜や根菜類など秋や冬が旬の食材や玄米などを選ぶのがおすすめです。
ストレスを解消し、自律神経を整える
ストレスによってアドレナリンが分泌されると子宮に届く血液量が減り、赤ちゃんに酸素や栄養が届きにくくなります。また、ストレスや冷えによってお腹が張ることで、子宮が収縮して赤ちゃんにもストレスがかかりやすくなります。妊娠中は体の変化や慣れないことも多いですが、ストレスが長く続く状態は胎内環境としてもあまりよくありません。
パートナーや周囲の人に協力してもらいながら、無理をせずにリラックスして過ごせると良いでしょう。立ちっぱなしで過ごすことや、過度な運動はお腹が張りやすくなるため、できるだけ避けるようにします。十分な睡眠時間を確保して、自律神経を整えるように心かげてみてください。
禁酒・禁煙
妊娠中の飲酒や喫煙は、流産や早産、奇形や発達の遅れなどのリスクがあります。胎盤はフィルターのような役割を果たしていると説明しましたが、アルコールやタバコに含まれるニコチンのように、分子の小さいものは胎児に移行してしまうからです。
妊婦が禁酒・禁煙するのはもちろんですが、受動喫煙にも注意が必要です。同居する家族にも協力してもらいましょう。
胎児の栄養供給についてよくある質問
赤ちゃんのためにもバランスよく栄養を摂取して胎内環境を整えたいですが、「つわりがあって食欲がない」「体調が悪くなって薬を飲みたい」というときもあるでしょう。ここでは、胎児への栄養供給に関連して、妊娠中の栄養摂取や薬などよくある質問をまとめました。
つわりで食べられないけれど赤ちゃんの栄養は大丈夫?
つわりがひどくてあまり食事を取れていないと赤ちゃんにきちんと栄養が運ばれるのか心配になるかもしれません。
一般的に、つわりは妊娠4週ごろから始まり、8〜9週ごろにピークを迎えることが多いと言われています。この時期の赤ちゃんはとても小さくそれほど多くの栄養を必要としておらず、卵黄嚢から栄養を補給しているので、栄養素が取れなくてもそれほど神経質になる必要はありません。
ただし、妊娠初期の葉酸不足は、招く可能性があるとされています。サプリメントで、葉酸やその吸収に必要なビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンCを補うと良いでしょう。一度の食事でたくさん食べようとせず少しずつ分割して食べるのもおすすめです。
薬は飲んでも大丈夫?
妊娠中に薬を内服すると、胎児に影響を及ぼす可能性があります。特に胎盤が形成されるまでは、母体の血液にある薬の成分が胎児に届きやすくなるため注意が必要です。また、胎盤が形成された後でも胎盤を通過する薬もあります。老廃物として母体に戻せず、胎児が尿として羊水に排出しても再び胎児に戻ってくることもあります。
奇形や発達障害などのリスクもあるため、持病がある方はもちろん、ちょっとした頭痛や風邪薬などの常備薬でも自己判断で飲まないようにしましょう。薬を処方してもらうときは、妊娠していることを伝えて必ず医師に相談してください。
栄養の摂りすぎはよくない?
妊娠中に栄養素の摂りすぎで注意したいのは、ビタミンAです。ビタミンAは、皮膚や目、粘膜の機能を正常に保つ上で欠かせない栄養素ですが、妊娠3ヶ月までに過剰摂取すると器官形成異常が高くなることでも知られています。
2,700μg /日以上摂取すると胎児の形態異常のリスクが高まるとされています。
100gあたりのビタミンAの量
・鶏レバー 14,000μg
・豚レバー 13,000μg
・うなぎ 1,500μg
レバーは鉄分が多く含まれていますが、ビタミンAの含有量も多くなりがちです。一度食べただけで過剰摂取になることはありませんが、食べ過ぎに注意しましょう。特にサプリメントも活用している場合は、結果的に摂取量が増えてしまうため注意が必要です。
まとめ
赤ちゃんは、時期によって卵黄嚢や胎盤から栄養を取り込んでいます。つわりのひどいときは、卵黄嚢から栄養を取り込んでいる時期でもあるため、たくさん食事を食べることができなくても神経質になる必要はありません。
赤ちゃんの発達や妊婦の体重のコントロールには個人差もあります。薬などは胎盤を通過して胎児に影響を与える可能性もあるため、妊娠中は医師に相談しながら、サプリメントなども上手に活用し、ストレスの少ないマタニティ生活を心がけましょう。