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Article妊娠保険に入るべきか?妊娠保険の補償内容と公的制度の活用方法を解説

コラム 2024.11.21

妊娠保険に入るべきか?妊娠保険の補償内容と公的制度の活用方法を解説

「妊娠・出産にはどのくらいお金がかかる?」

「妊娠中に万が一、入院したら不安だな…」

「妊娠中の保険は入った方がいいの?」

妊娠・出産にまつわる費用や妊娠保険の加入について、疑問や不安を感じている妊婦さんもいるでしょう。妊娠は病気でないため基本的に公的医療保険制度の対象外ですが、公費助成が充実しています。

一方で、思いがけない入院や手術が必要になるケースもあり、妊娠保険の加入を迷う人もいるでしょう。

本コラムでは、妊娠保険がどのような場合に役立つか、活用できる公的制度との違いや妊娠・出産に必要な費用面も含めて解説します。ご自身に妊娠保険が必要かどうか、参考にしてみてください。

妊娠保険とは妊娠や出産のリスクを保障する医療保険

妊娠保険とは、妊娠中や出産時の不測のリスクに備える医療保険です。妊娠中に加入できる保険もありますが、数が限られているうえに加入時点の妊娠や出産にまつわる治療は対象外となることが多いのが現状です。

妊娠中に加入できる保険でも「妊娠27週まで」のように条件がつく場合もあります。加入を検討している場合は、妊娠前から加入しておくのが望ましいでしょう。

正常分娩の出産費用は公的医療保険制度の対象外となるため、全額自己負担です。妊娠保険に加入していても、公的医療保険制度が適用されないものに関しては基本的に給付金は支払われません。

異常分娩は公的医療保険制度の対象となるため自己負担額が3割に抑えられますが、それでも医療費が高くなる可能性があります。

妊娠前から民間の医療保険に加入している場合は、保障の対象になるケースがあるため経済的な不安が軽減されます。妊娠保険は万が一の不測の事態に備えたい人に向いている保険です。

妊娠保険・公的医療保険制度・公費助成の適用範囲について

妊娠中・出産時にはさまざまな費用がかかります。実際にどのような場合に妊娠保険が活用できるのか、公的医療保険や公費助成と併せて比較した表は下記のとおりです。

費用の種類 公的医療保険 妊娠保険適用 公費助成の種類
妊娠中の健診 適用外 適用外 妊婦健診助成金など
妊娠中の入院

(つわり・切迫早産・妊娠高血圧症など)

適用・3割負担 給付金支払い対象 該当なし
正常分娩 適用外 適用外 出産育児一時金
異常分娩

(帝王切開・切迫早産など)

適用・3割負担 給付金支払い対象 該当なし
無痛分娩 適用外 適用外 出産育児一時金で一部まかなえる
産後の入院 正常分娩:適用外

異常分娩:適用

ケースによっては給付金支払い対象 出産手当金

公的医療保険が適用になるケースでは、妊娠保険も給付金の支払対象になる場合があります。また、公的医療保険が適用されないケースでは、多くが公費助成の対象になります。

妊娠中・出産時に考えられる入院や手術のリスク

妊娠が判明してから出産まで、特にトラブルなく経過し正常分娩だった場合は、公費助成があるため意外と出費が少なく感じる人もいるでしょう。しかし、妊娠・出産には入院や手術のリスクもあり、その一例を表にまとめました。

妊娠・出産中のリスク 病態
重度のつわり
(妊娠悪阻)
妊娠初期のつわりの程度は個人差が大きく、人によっては飲食が困難になる。
極度な体重減少・脱水になり、入院して治療が必要なケースがある。
妊娠糖尿病 妊娠中に初めて発見された糖代謝異常で、原因は妊娠中のホルモンの影響でインスリンの働きが抑えられ血糖が上がりやすくなるため。
通常、出産後に血糖値は元に戻る。
妊娠高血圧症候群 妊娠20週以降に高血圧状態になり、尿中に異常な量のタンパク質が含まれる病態で適切な管理と治療が必要。
子癇(しかん)と呼ばれる痙攣発作を起こすことがある。
うつ病 妊娠中は気分の低下や疲労、食欲の変化、睡眠不測などが要因で症状が現れやすくなる。
早産や低体重出生のリスクが高まる
切迫早産 早産の一歩手前の状態で、お腹のはりや痛みが規則的かつ頻回におこり、子宮口が開き赤ちゃんが出てきそうな状態。
切迫の程度により入院管理が必要な場合がある。
流産 妊娠22週より前に妊娠が終わり、赤ちゃんが亡くなること。
もっとも多い原因は赤ちゃんの染色体異常で、妊娠の15%前後が流産となり、多くの女性が経験する疾患。
帝王切開 母子の安全を第一に考慮し、自然分娩が困難または危険と判断される場合に行われる手術。

症状や程度によっては入院して治療や手術が必要な場合があり、その場合は公的医療保険が適用され自己負担は3割です。妊娠保険に加入していれば給付金の支払対象になるケースがありますので、経済的な心配をせず治療に専念できるでしょう。

妊娠・出産にかかる費用について

妊娠から出産までに必要な費用については、次のようなものがあります。

  • 妊娠中の妊婦健診費用
  • 妊娠中の入院費用
  • 出産時の分娩費用(正常分娩・異常分娩・無痛分娩)
  • 出産後の入院費用

それぞれの費用のおおまかな目安について解説します。

妊娠中の妊婦健診費用

妊娠中の定期検診にかかる費用は公的医療保険の適用外で、全額自己負担です。出産までに合計14回ほど健診を受けますが、母子手帳をもらう際に公的補助として自治体から補助券が支給されるため、最終的な1回の支払いは1,000〜3,000円程度です。

しかし、自治体によって補助額や検査内容・処置など健診費も異なるため、詳細は各自治体へ確認しましょう。

妊娠中の入院費用

妊娠中には重度のつわりや切迫早産、妊娠高血圧症候群などで入院になるケースがあります。入院費用は公的医療保険が適用となるため自己負担は3割で、治療費が高額になった場合は高額療養費制度の利用も可能です。

入院が長期化すればその分の治療費負担も増加しますが、民間の医療保険に加入している場合は入院給付金を受け取れます。

出産時の分娩費用(正常分娩・異常分娩・無痛分娩)

厚生労働省が令和5年に出した「出産費用の見える化等について」によると、令和4年度の出産費用のうち、正常分娩のみは約48万円です。

分娩のなかで正常分娩にかかる費用は公的医療保険の適用外のため、妊娠保険の入院・手術給付金も支払われません。代わりに「出産育児一時金」でまかなうことができます。

異常分娩の場合は、公的医療保険の適用となり治療や出産にかかる費用は3割負担で、妊娠保険も給付金の支払対象となることが一般的です。また、無痛分娩は正常分娩費用に加えて麻酔などの費用が平均して10~20万円程度加算されますが、異常分娩にならない限りは自己負担です。

出産後の入院費用

正常分娩の入院期間は数日から1週間程度ですが、帝王切開などの異常分娩の場合は2週間前後になるケースもあります。産後の入院費用は、分娩と同様に異常分娩の場合のみ公的医療保険制度の対象です。

妊娠中・出産時に活用できる公的医療保険や公費助成の種類について

妊娠から出産までに活用できるおもな公的医療保険や自治体の助成金は、下記の表のとおりです。

制度の種類 概要
出産手当金 ・妊娠・出産により仕事に就けない期間に受け取れる手当金

・休業前直近1年間の平均標準報酬の月額3分の2が支給される

・対象期間は出産予定日の42日前から出産翌日後56日目まで(産前産後休業を取得している期間)

出産育児一時金 ・出産後に健康保険から世帯主に対して子ども1人当たり50万円の一時金が支払われる

・受給方法は直接支払制度と受取代理制度の2種類がある

・妊娠期間が満12週以上での死産・流産の場合も対象

育児休業給付金 ・子どもが1歳になるまでの間、育休を取得した際に雇用保険から67%もしくは50%の給付金が支給される

・復職する意思があれば子どもが2歳になるまで給付を延長可能

・母親だけでなく父親も受給可能

医療費控除 ・1年間に支払った医療費が一定の基準を超えた場合に所得税や住民税の控除が受けられる

・控除の対象となるのは出産で入院する際に利用したタクシー代や入院中の食事代(身の回り品の購入費用は対象外)

高額療養費制度 ・医療機関等で支払った額が1カ月の上限額を超えた場合に、超えた金額が支給される

・上限額は年齢や所得によって異なる

・異常分娩や妊娠に伴う異常で入院が必要になった場合に利用可能

社会保険料・税金の免除 ・出産による休業で収入が限定される場合に保険料や税金の支払いが免除される

・具体的には健康保険料、厚生年金保険料、出産手当金・出産育児一時金・育児休業給付金の所得税

公的な制度や民間の妊娠保険をうまく活用し、妊娠中・出産時における費用を軽減する参考にしてみてください。

まとめ

妊娠保険は公的な制度に加えて、妊娠・出産にかかる経済的負担を軽減する選択肢のひとつとして便利な保険です。妊娠保険への加入が必要かどうかは、個人の健康状態や必要性によって変わります。

妊娠・出産中にトラブルが起きないのが一番ですが、入院や手術のリスクもあるため経済的な不安を軽減したい人は加入を検討しましょう。妊娠中に加入できる保険もありますが、加入に条件がついたり保障内容に大きな違いがあったりするため、妊娠前からの加入がおすすめです。

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