Article無痛分娩を選択するのがおすすめな人の特徴は?リスクや後遺症・できない人についても解説
コラム 2024.08.30
出産をするにあたって、無痛分娩を選択すべきか否か悩んでいる方もいるでしょう。無痛分娩は、下半身に麻酔をかけて、痛みを和らげる方法です。「痛みが苦手」「産後に備えて体力を温存したい」「出産時のリスクを減らしたい」などの理由から、無痛分娩を選択する方も多くいます。
しかし、無痛分娩を選択するうえで、リスクや後遺症についても把握しておくことが重要です。また、無痛分娩ができない人もいるため、選択できるかどうか前もってチェックしておくと良いでしょう。
この記事では無痛分娩を選択するのがおすすめな人やできない人・リスク・後遺症について解説します。この記事を読むことで、無痛分娩について後悔しない選択ができるようになります。
無痛分娩を選択する人の割合
厚生労働省が行った令和2年度の「医療施設調査」によると、無痛分娩を選択する人の割合は8.4%ほどでした。無痛分娩を選択する人は徐々に増加していますが、海外と比較すると未だに普及率が低いのが現状です。
無痛分娩を選択する人が多い国として、アメリカやフランス、スウェーデン・イギリスなどが挙げられますが、どの国も無痛分娩率は60%を超えています。無痛分娩率が高い背景には、無痛分娩が医療保険の適用となることや入院日数が短いことが関係していると言えるでしょう。
日本における無痛分娩の普及率が低い理由として、医療保険の適応外であることや無痛分娩に対応している医療施設が限られていることなどが挙げられます。しかし、無痛分娩で得られる利点も多いことから、費用対効果を見極めて選択することが重要です。
無痛分娩を選択した理由
無痛分娩で出産した人は、どのような理由で選択したのか気になる人もいるでしょう。無痛分娩を選択した理由として、以下の5つが挙げられます。
・痛みが苦手
・産後の疲労軽減のため
・産後の回復を早めるため
・出産時のリスクを減らすため
・初めての出産において負担が大きかったため
無痛分娩は出産時に痛みを軽減できるため、産後に備えて体力を温存することが可能です。また、産後の回復が早い傾向にあることから、無痛分娩を選ぶ人が増加しています。
無痛分娩を選択するのがおすすめな人の特徴
無痛分娩を選択するのがおすすめなのは、以下に当てはまる人です。
・痛みに弱い人
・会陰切開をしたことがある人
・帝王切開に切り替わる可能性がある人
・妊娠高血圧症候群の人
それぞれ詳しく解説します。
痛みに弱い人
無痛分娩は痛みを軽減し、落ち着いた状態で出産に挑めることから、痛みに弱い人に適しています。ただし、無痛分娩は全く痛みが無くなるわけではなく、ある程度の痛みや感覚を残すのが一般的です。ある程度の感覚を残すことで、赤ちゃんが産道を通る際に適切なタイミングでいきむため、自然分娩と同様のお産を経験できます。
会陰切開をしたことがある人
無痛分娩は下半身に麻酔をかけるため、会陰切開をする際に別途麻酔をする必要がなく、痛みの心配もありません。さらに、上半身には麻酔が効いていないため、産後すぐに赤ちゃんを見届けたり抱っこしたりすることが可能です。
帝王切開に切り替わる可能性がある人
無痛分娩の麻酔は下半身の広範囲に効くことから、帝王切開に切り替わる可能性のある人におすすめです。自然分娩中に微弱陣痛や回旋異常・分娩停止・胎児機能不全などが生じた場合や、母体に負担がかかっている場合など、緊急帝王切開に切り替えるケースもあります。
自然分娩から緊急帝王切開になった場合は、手術を開始するまでに早くて20分ほどかかりますが、無痛分娩であれば10分ほどで手術に取り掛かれます。自然分娩よりも早く緊急帝王切開が開始できることから、無痛分娩は緊急時の分娩体制が整っている分娩方法といえるでしょう。
妊娠高血圧症候群の人
妊娠高血圧症候群と診断されている人は、無痛分娩を選択することで、陣痛の痛みやいきむことによる血圧の上昇を抑えられます。妊娠高血圧症候群の人は血圧が上昇しすぎると、痙攣発作や脳出血・HELP症候群などを引き起こす可能性があります。無痛分娩を選択することで、重症化することを防げるのです。
また、高血圧の状態では血液の循環が悪くなるため、赤ちゃんへの血液と酸素の供給量が減る可能性がありますが、無痛分娩では血流を改善する効果も期待できるため、安定した血液と酸素供給が可能です。
無痛分娩のリスク
無痛分娩は痛みを軽減できたり緊急帝王切開に切り替える体制が整っていたりなど、さまざまな利点がある分娩方法ですが、いくつかリスクも存在します。
無痛分娩におけるリスクは、以下の5つです。
・麻酔後に発熱する可能性がある
・一過性の徐脈がみられる可能性がある
・分娩時間が長時間にわたる可能性がある
・吸引分娩や鉗子分娩になる可能性がある
・強い痛みを感じる可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
麻酔後に発熱する可能性がある
無痛分娩は、硬膜外麻酔と呼ばれる背骨付近に麻酔をかける方法が一般的です。硬膜外麻酔をした後、4〜5時間経過したのち、38度以上の発熱が見られることがあります。発熱自体は赤ちゃんへ影響をもたらすことはなく、分娩後に解熱することが多いですが、解熱剤を使用したり点滴をしたりなど、母体への処置が必要となるケースも見受けられます。
一過性の徐脈がみられる可能性がある
無痛分娩では、麻酔薬により赤ちゃんに一過性の徐脈が見られることがあります。一過性の徐脈は麻酔をした後、数十分で発症することが多いです。多くの場合は酸素や子宮収縮抑制薬の投薬・母体の体位変換により10分以内に回復しますが、万が一回復しない場合は緊急帝王切開となることがあります。
分娩時間が長時間にわたる可能性がある
無痛分娩のリスクとして、麻酔薬を投与した後に陣痛が弱くなり、分娩時間が長時間にわたる可能性が挙げられます。陣痛が弱くなった場合は、陣痛促進剤を使用したり麻酔薬の投与を中止したりしますが、分娩が進まない場合、緊急帝王切開となる場合があります。
吸引分娩や鉗子分娩になる可能性がある
麻酔の効き方は一人ひとり異なるため、無痛分娩では吸引分娩や鉗子分娩になる可能性があります。麻酔の効きが良く、いきむタイミングがズレたり正しくいきめなかったりしてお産の進みが遅い場合には、吸引分娩や鉗子分娩でサポートすることがあります。
強い痛みを感じる可能性がある
無痛分娩は自然分娩よりも痛みを和らげられますが、麻酔が効きにくかったり、一部分だけ痛みが残ったりすることがあります。また、硬膜外麻酔と併用して投与する陣痛促進剤によりお産が急激に進み、麻酔が効き始めるまでに陣痛がくるケースも見受けられます。
無痛分娩は一人ひとりの状況に合わせて麻酔の量を調整するため、最大限痛みを抑えられますが、痛みを感じる可能性があることも前もって把握しておくと安心です。
無痛分娩後に見られる後遺症
無痛分娩後に見られる後遺症として、以下の症状が挙げられます。
・足の痺れ
・感覚麻痺
・排尿障害
・頭痛
・口唇や舌の痺れ
・耳鳴り
・めまい など
無痛分娩はお産の痛みを和らげられるのが最大の特徴ですが、お産後に後遺症が出る可能性もゼロではないため、リスクや後遺症を踏まえたうえで無痛分娩にするか否かを選択することが重要です。
無痛分娩ができない人の特徴
以下に当てはまる方は、無痛分娩を希望しても選択できない可能性があります。
・麻酔薬でアレルギー症状が出たことがある人
・抗凝固剤の薬を飲んでいる人
・腰椎骨折や腰椎の手術をした経験がある人
・背骨に極度の側彎が見られる人
・背中の皮下脂肪が多い人
上記に当てはまる場合でも無痛分娩を選択できる可能性もあります。無痛分娩ができるか否かは、担当の産婦人科医へ相談してみてください。
まとめ
お産の痛みを和らげられる無痛分娩は、年々選択する方が増えています。痛みが苦手な人は、無痛分娩を選択することで落ち着いた状態でお産に挑めるのが特徴です。帝王切開に切り替わる可能性がある人や妊娠高血圧症候群の人も、緊急時にすぐに帝王切開に切り替えができたり、重症化するのを防げたります。
しかし、無痛分娩は発熱や一過性の徐脈・分娩時間が長時間にわたる可能性・吸引分娩や鉗子分娩でのお産・強い痛みを感じるリスクがあります。痺れや排尿障害などの後遺症がみられる可能性もあるため、利点とリスク・後遺症など、さまざまな観点から自然分娩か無痛分娩を選択するようにしましょう。