Article無痛分娩は体力の回復が早い|無痛分娩後の過ごし方
コラム 2024.08.30
無痛分娩が、赤ちゃんや産後の生活に影響しないのか気になりませんか。無痛分娩でも、通常の自然分娩と基本的には変わらず、赤ちゃんに触れ、授乳を始めることができます。むしろ無痛分娩で体力の消耗が抑えられて、赤ちゃんとゆっくり向き合う余裕ができたという方も少なくありません。
本記事では、無痛分娩が終わった後の赤ちゃんとの対面や授乳などのお世話、産後の体の変化について紹介します。産後のことまでイメージできると、より無痛分娩のメリットがわかり不安なく当日を迎えられるでしょう。
無痛分娩後の体の変化
無痛分娩の後に体に起こる変化は、基本的に通常の自然分娩と変わりませんが、稀に麻酔の副作用が出ることもあります。ただ、ほとんどの場合は副作用が辛いというよりも、無痛分娩により思ったよりも産後を元気に過ごせたと感じることが多いでしょう。そのおかげで赤ちゃんと接するときに余裕ができたと感じている方もたくさんいらっしゃいます。
無痛分娩は体力の消耗が抑えられる
産後は、陣痛や出産時に体力や気力を消耗したことで、筋肉痛になって力が入らない、体が動かせないということも珍しくありません。赤ちゃんのお世話を大変に感じることや、自分の身の回りのことや食事もままならないこともあります。
無痛分娩であれば、通常の自然分娩より陣痛による体の負担が抑えられ、筋肉痛がないこともあります。産後の体の回復も早く、授乳など赤ちゃんのお世話に集中でき、退院後の育児を覚える上でも良かったという方もたくさんいます。
通常分娩と同じように後陣痛がある
出産後は子宮が回復し徐々に元の大きさに戻る過程で「後陣痛」と呼ばれる痛みを感じます。元の大きさに戻るには6〜8週間ほどかかりますが、一般的に出産当日から痛みがあり2〜3日ほどで落ち着いてきます。無痛分娩の場合でも、この時点で麻酔は中止しているため自然分娩と同じように後陣痛があります。
個人差はありますが、後陣痛は初産婦より経産婦の方が痛みを強く感じやすく、授乳の際には子宮収縮が強くなるため痛みも増します。痛みを和らげるためにお腹周りを温めたりマッサージをしたりしますが、痛みが強い場合は内服薬や坐薬を使用することがあります。
頭痛や足の痺れが起こることも
分娩後は、足が痺れたり感覚や動きが鈍くなったりしています。麻酔による影響もありますが、分娩中の特殊な姿勢、赤ちゃんの頭で神経が圧迫されることによるもので、自然分娩でも起こることです。
また、非常に稀ですが、麻酔のために針やカテーテルを挿入する際に硬膜が傷づくことで頭痛が起こることがあります。硬膜外麻酔による頭痛は、頭を起こすと強くなり横になると軽減するため安静にして様子をみます。多くの場合は数日で改善しますが、痛みが強い場合は我慢せずにナースコールを押して声をかけましょう。
無痛分娩の直後
無痛分娩の後は、麻酔のカテーテルを抜くなどの処置が一部あるものの、赤ちゃんとの対面や初めての授乳は、自然分娩と同じように行うことができます。
出産直後は分娩室で過ごす
赤ちゃんが生まれると、自然分娩と同様に母体と赤ちゃんの状態を確認します。無痛分娩の麻酔は下半身のみで意識があるため、問題なければ生まれてすぐの赤ちゃんと対面をしてスキンシップを行うことができます。出産後2時間は出血など体調に変化が起こりやすいため、分娩室で安静にします。
硬膜外腔に投与された麻酔薬は母乳を介して赤ちゃんに影響することはほとんどないとされており、授乳を行うことができます。母乳が出るのは分娩後2〜3日ですが、赤ちゃんがおっぱいを吸うことで出るようになるため、出産直後から授乳を始めます。
麻酔のカテーテルを抜く
出産後は医師の判断のもと、背中の麻酔カテーテルを抜きます。カテーテルを抜去する箇所の出血が多い時は出血が治るのを待ってから抜き、絆創膏を貼ります。麻酔薬の投与を中止すると、数時間で徐々に痛みが出てくることがあるため、点滴や内服薬で痛みをコントロールすることもあります。
6時間ほどベッドの上で過ごす
2時間ほど分娩室で安静にした後、問題なければ入院している個室へ戻ります。分娩後は下半身の感覚や動きが鈍くなっていることもあり、歩かずにベッドで移動します。
分娩後6時間ほど経過するまではベッド上で過ごし、トイレもベッドの上で看護師の介助のもとに行います。6時間ほど経過して検温などを行い、状態に問題がなければ、スタッフの付き添いの元、初めて歩くことができます。産後は尿意がわかりにくくなっていますが、初回の歩行の後は3〜4時間を目安にトイレに行くようにしましょう。
出産翌日から退院まで
基本的に無痛分娩でも産後は通常の分娩と変わらず、産後は赤ちゃんへの授乳や抱っこの仕方、沐浴の仕方を教わります。無痛分娩では、体力や気力が残っているので、比較的余裕を持って赤ちゃんと接することができるでしょう。
シャワー浴は経過が良ければ翌日から
出産当日はシャワーを浴びることはできないため、温かいタオルで体を拭きます。翌日に、医師が分娩時の傷や子宮の回復を診察して、問題なければシャワー浴を始められます。産後は、汗や母乳、悪露などで清潔を保ちにくいためトイレの度にナプキンを取り替え、基本的に毎日シャワー浴を行うようにしましょう。
また、湯船に浸かると子宮口から細菌が入って感染を起こす可能性があります。子宮口が閉じるまではシャワー浴で過ごし、退院して1ヶ月後の健診で産婦人科医の許可が出てから、湯船に浸かりましょう。
抱っこの仕方、おむつの替え方、沐浴の実施
退院後も自宅に帰って育児ができるように、授乳や沐浴など赤ちゃんのお世話の方法を覚えて帰る必要があります。無痛分娩で余裕ができ、入院中に赤ちゃんのお世話に慣れることができれば退院後の生活もよりスムーズになるでしょう。赤ちゃんが上手に母乳を飲めるようになるには、お母さんの姿勢や赤ちゃんの咥えさせ方などポイントがいくつかあります。
沐浴は、産後2日目に見学し、産後3日目に実際にやってみることが多いです。沐浴は単に体を清潔にするだけでなく、赤ちゃんの様子や皮膚の状態を観察、コミュニケーションの機会にもなります。おむつの交換も替え方だけでなく、うんちの色など健康状態をチェックするなど必要なことを覚えていきます。赤ちゃんがどのように成長していくかを踏まえて退院後の生活や育児について指導を受け、早ければ4〜5日で退院となります。
退院してからの過ごし方
出産前ほど体力が戻るのには、産後3ヶ月から長い人で1年ほどかかる方もいます。通常分娩に比べて、無痛分娩では体の回復が早いと言われていますが、産後の体はデリケートで変化もしやすいため無理は禁物です。
産後1〜2週間は休養を優先
産後1〜2週間は、赤ちゃんのお世話以外は横になって休み、体の回復に努めます。産後は、ホルモンバランスの変化によって、めまいやむくみ、頭痛やだるさなどの症状が現れたり、不安やイライラなど心にも変化が現れたりします。体や心が変化するなかで、慣れないおむつの交換や2〜3時間毎の授乳はストレスを感じたり負担に思ったりすることもあるでしょう。
休めそうなときにはしっかり休み、産褥体操を無理のない範囲で行いましょう。家事はまだできないため家族にお願いしましょう。無痛分娩で体の負担が抑えられても、産後は休養がしっかり必要であることをパートナーや家族にも理解してもらう必要があります。
産後3週間からは少しずつ体を慣らす
産後3週間経つと少しずつ家事を初めても大丈夫ですが、無理はせず体を慣らす程度にします。布団は敷いたままにして、疲れた時や赤ちゃんが寝ている時に一緒に横になって昼寝をしましょう。動きすぎると悪露が増えることや、発熱することもあるため無理をしないようにします。
産後1ヶ月ほどは、長時間の外出や重たい荷物を持つなど腹圧のかかる動作は避けます。経過が順調であれば、産後6週間ほどで職場への復帰や性生活も再開できるでしょう。とはいえ慣れない育児に加えて家事で寝不足になることも多いため、様子をみて少しずつ元の生活に戻します。
まとめ
出産時の痛みだけでなく、産後の体の回復や育児のことも考えて無痛分娩を選ぶ方が増えています。 無痛分娩を選択するときや準備するときは、産後までをイメージをしてみると、より納得のいく出産や育児を始められるでしょう。