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Article無痛分娩の種類は?痛みの状態やおすすめの人、利用する流れを解説

コラム 2024.08.30

無痛分娩の種類は?痛みの状態やおすすめの人、利用する流れを解説

陣痛をやわらげて出産できる無痛分娩は、痛みに不安を感じる方におすすめの出産方法です。「麻酔には種類があるのか」「どのタイミングで麻酔を開始するのか」気になる方もいるでしょう。

 

無痛分娩における処置は、硬膜外麻酔と脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔の2種類です。さらに、開始タイミングによっても、自然無痛分娩と計画無痛分娩があります。

 

この記事では、無痛分娩の種類や麻酔による体の変化、利用する流れを解説します。無痛分娩を利用する際の見通しも立てられるため、ぜひ参考にしてください。

無痛分娩における処置の種類

無痛分娩における処置の種類には、硬膜外麻酔と脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔があります。どちらの麻酔も分娩進行の妨げとならないよう、低濃度の局所麻酔薬を使用します。麻酔の目的は完全に痛みをとるのではなく、耐えられる痛みにコントロールすることです。

 

出産するときには、痛みの場所や強さが変化します。そのため、医療スタッフは妊婦さんと赤ちゃんの様子を注意深くモニターしながら薬剤を投与していきます。処置の種類をそれぞれ解説するので、その特徴を把握しましょう。

硬膜外麻酔(こうまくがいますい)

硬膜外麻酔とは、カテーテル(チューブ)を背中から硬膜外腔(こうまくがいくう)まで入れ、麻酔薬を少しずつ注入する無痛分娩の方法です。硬膜外腔とは、脊髄を覆う硬膜とその外側を囲む脊柱管の間にある空間です。カテーテルは1mmほどの細さの、やわらかいプラスチック製でできています。

 

硬膜外麻酔は血管内に薬剤を投与する方法と比べて鎮痛効果が高い方法です。痛みの場所や程度、種類はお産の進行具合によって変わりますが、痛みの信号は常に脊髄に集まり脳へ伝わります。カテーテルから硬膜外腔へ薬剤が入ることで、脳に伝わる痛みの信号をブロックして陣痛をやわらげることが可能です。

 

硬膜外麻酔は麻酔薬が胎盤を通して赤ちゃんへ影響するリスクがほぼありません。そのため、安心して選択できる方法です。

脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(せきずいくもまくかこうまくがいへいようますい)

脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔は、お産の進み具合によって必要時に併用する無痛分娩の方法です。針が硬膜外腔に入ったあと、同じ針穴から脊髄くも膜下腔と呼ばれる空間に薬剤を入れます。硬膜外麻酔に比べて麻酔効果が早く、数分後にはある程度の効果を感じやすいとされています。

無痛分娩における痛みを含めた体の状態

無痛分娩は、麻酔によりお産の痛みを3分の1程度に軽減することが可能です。薬剤が効き始めると、子宮や骨盤部の神経から脳へ伝わる痛みの信号をブロックします。足の感覚や動きの信号も鈍くなり、足がしびれたり、力が入りにくいと感じたりする場合もあるでしょう。

 

転倒予防のためにも、麻酔開始からお産終了までは基本的に同じベッドの上で過ごすことが必要です。排尿にかかわる神経の信号も鈍くなるため、麻酔が効いてきたら尿の管を挿入して排尿を管理します。飲水は可能ですが、腸の動きが悪くなることもあるので、嘔吐しないよう食事制限の順守が大切です。

 

カテーテルを抜くのは、出産後に一通りの産科的な処置を終えてからです。数時間後には、歩行もできます。

無痛分娩における開始タイミングの種類

開始タイミングによる無痛分娩の種類には、陣発を待ってから麻酔を始める自然無痛分娩と、計画的に始める計画無痛分娩があります。自然に陣痛が来てから入院・処置をおこなうことを「自然無痛」、計画的におこなうことを「計画無痛」と呼びます。

 

それぞれの特徴から、おすすめの人も異なります。これから紹介する特徴や違いを確認しましょう。

自然無痛分娩

自然無痛分娩とは、自然に陣痛が来てから来院し、無痛分娩の処置をおこなう方法です。「誕生日は赤ちゃんのタイミングにまかせたい」と考える方におすすめです。

 

硬膜外麻酔による無痛分娩に24時間対応できる医療機関が限られている日本では、計画分娩のみ対応可能なケースが多くあります。24時間365日体制で硬膜外麻酔による無痛分娩に対応可能なクリニックも多くありますので、麻酔科外来の受診などの必要な手続きを事前におこなっていれば、自然に陣痛が来たケースでも無痛分娩を始められます。

計画無痛分娩

計画分娩とは、あらかじめ分娩の日程を決め、陣痛が始まる前に子宮収縮促進剤を使用して人工的に陣痛を誘発する方法です。分娩の日程は、37週以降におこなう内診の所見により判断されます。計画無痛分娩は出産予定日を決められるため、上にお子さんがいる場合や立ち会い希望の場合におすすめの方法です。

 

自然無痛分娩はお産の進行が早く麻酔が間に合わなかったり、いきみすぎて背中に針が入らず麻酔が使えなかったりする場合もあります。計画無痛分娩の場合、そのような状態を防ぐことが可能です。

無痛分娩を利用する流れ

一般的に、無痛分娩は以下の流れで進めています。

 

  1. 妊娠22週頃に、妊婦検診で無痛分娩の希望を確認
  2. 妊娠30週頃、遅くとも35週までに、麻酔科外来を予約・受診
  3. 無痛分娩の詳しい説明、同意書の提出
  4. (計画無痛分娩)「妊娠37週以降/お腹の張りが頻繁/子宮の出口がやわらかい/子宮口が多少開いてくる」時期に予定決定、入院は計画分娩日の前日
  5. (自然無痛分娩)「陣痛が始まった妊婦さんが希望/担当医師の許可が得られた」時点で硬膜外麻酔の準備開始

 

さまざまな要因にもよりますが、自然無痛分娩の開始目安は子宮の出口が数cm開いたときや生理痛より強くなったタイミングです。当院では途中で無痛分娩の希望が変わった場合も対応しており、キャンセル料の発生もありません。

無痛分娩の種類に関するよくある質問

無痛分娩の種類について、さまざまな質問をいただきます。ここでは、以下3つの質問にお答えします。

 

  • 無痛分娩の安全性が知りたいです!
  • 無痛分娩ができる条件はありますか?
  • 無痛分娩は立ち会い可能ですか?

 

無痛分娩を選ぶうえで、それぞれの解答を参考にしてください。

無痛分娩の安全性が知りたいです!

硬膜外麻酔は一般的な手術でも使用される麻酔で、グローバルスタンダードな手法です。日本では、2023年度における全分娩数に占める無痛分娩の件数割合は11.6%と、まだ多くはありません。しかし、海外の硬膜外麻酔を使った分娩率はアメリカ全体で73.1%、フランスでは2016年で82.2%にものぼります。

 

麻酔が効いている間は副作用が出る可能性もあります。足の感覚が鈍くなったり、排尿がしづらくなったりなどが起こるかもしれません。

 

この状態は、麻酔が切れるとともに解消していきます。まれではありますが、硬膜穿刺後頭痛や局所麻酔薬中毒などの合併症も起こりうるとされています。詳しくは一般社団法人 日本産科麻酔学会のホームページをご確認ください。

無痛分娩ができる条件はありますか?

妊婦さんの体質や状態によっては、硬膜外麻酔による無痛分娩を実施できない場合があります。以下のような状況に当てはまる場合は、選択できません。

 

  • 血液が固まりにくい
  • 局所麻酔薬アレルギーがある
  • 大量に出血している、脱水が著しい
  • 背骨の変形・手術後、背中の神経に病気がある
  • 注射部位に膿が溜まっている、全身がばい菌に侵されている
  • 高熱がある

 

無痛分娩が可能であっても、慎重な投与が必要な場合もあります。心配な症状があるときは、必ず医師に相談しましょう。

無痛分娩は立ち会い可能ですか?

医院によっては、無痛分娩での立ち会いも可能です。立ち会い分娩は赤ちゃんが誕生する瞬間をご家族で共有でき、喜びを分かち合える方法です。体をさすったり手を握ったりすることで、母親が抱く不安の軽減にもつながります。

 

ただし、緊急の処置が必要な場合など、母子の状態によっては立ち会いできないこともあります。条件や立ち会いについての詳細は、かかりつけの医院までお問い合せください。

まとめ

無痛分娩の方法には、硬膜外麻酔と脊髄くも膜下麻酔併用硬膜外麻酔の2種類があります。薬剤を使用することで、お産の痛みを3分の1程度に軽減することが可能です。

 

また、開始タイミングにも、陣痛が来てから始める自然無痛分娩と、日取りを決めておこなう計画無痛分娩の2種類があります。誕生日を赤ちゃんのタイミングにまかせたい人は、自然無痛分娩がおすすめです。上にお子さんがいたり、パートナーの立ち会いを希望したりする場合は、計画無痛分娩がよいでしょう。

 

計画無痛分娩は妊娠37週以降にお腹の張りが頻繁になり、子宮の出口がやわらかく子宮口が多少開いてくる時期に予定が決まります。ご家庭の状況によって、選択してください。

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