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Article妊娠後期の下痢はなぜ起こる?対処方法やすぐに受診が必要な症状は?

コラム 2025.02.23

妊娠後期に起こりやすい症状

妊娠中に下痢に悩まされているという方はいませんか。特に妊娠後期はお腹が大きくなることや、女性ホルモンの影響、内服している薬の影響などで下痢になりやすくなります。下痢が続くと体力が落ちてしまうことや、赤ちゃんに影響はないのか心配になることもあると思います。

 

本記事では、妊娠後期に下痢が起こる原因や、感染症にかかっているなどすぐに病院を受診した方がいい症状について解説します。下痢になったときの対処方法や日常生活の注意点を知り、安心して妊娠生活を送れるように参考にしてください。

 

妊娠後期に下痢が起こる原因は?

妊娠後期に下痢になる原因は一つではありません。子宮による腸の圧迫など妊娠経過で生理的に起こることもあれば、食中毒など治療が必要な場合もあります。まずは原因について知ることで、日常的に気をつけて過ごすことや、下痢になったときに対処しやすくなるでしょう。

 

子宮による腸の圧迫

妊娠前の子宮の大きさは握り拳くらいですが、妊娠が進むにつれて、長さも幅も20〜30cmくらいまで大きくなります。子宮の周りの臓器や、後ろにある腸を押し上げたり、圧迫したりします。

 

物理的な圧迫により腸の動きが抑えられ、うまく消化や吸収が行われにくくなります。未消化の食べ物が多くなることや水分の吸収が不十分になることで、下痢になりやすくなります。

 

女性ホルモンの変化

女性ホルモンのプロゲステロンは、個人差があるものの妊娠後期に分泌量が増加する傾向にあります。。プロゲステロンは子宮収縮を抑制し妊娠を継続させる役割がありますが、腸の動きを抑制させる作用があります。腸の蠕動運動が弱くなると便秘になることが多いのですが、たまった便を排出しようとして下痢になる場合もあります。

 

ストレスによる自律神経の乱れ

妊娠後期は、ホルモンバランスの変化やお腹が大きくなることで思ったように動けずストレスを感じやすい時期です。出産に対するプレッシャーを感じている方も少なくありません。ささいなことでもイライラしやすくなったり、落ち込んだりしてしまうこともあるでしょう。

 

コルチゾールが増えるなど自律神経が乱れることで腸の動きが活発になって下痢になりやすくなります。反対に、ストレスによって交感神経が優位になると大腸の動きが弱くなって便秘になることもあります。下痢の場合も便秘の場合も続くと、腸内環境が悪化して、さらに腸の不調を起こしやすくなるため、早めに対処するのがよいでしょう。

 

食中毒

妊娠中は免疫力が低下しており、妊娠前は問題のない菌でも食中毒を起こしやすく下痢を起こすことがあります。夏はサルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌性胃腸炎、冬はノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性胃腸炎が増えます。ただし流行の時期に関わらず年間を通して、感染する可能性があるので、注意が必要です。

生ものや加熱が不十分な状態の食品を食べることでこれらの食中毒を起こしやすくなります。加熱殺菌されていない乳製品などは避け、魚や肉や卵などを調理する際は、十分に加熱を行いましょう。

 

また、感染している人の嘔吐物やふん便からうつることも多いため、妊婦自身だけでなく家族も感染症には注意しましょう。帰宅時や調理前、トイレの後などはよく手を洗うなど感染予防を心がけてください。

 

薬の影響

また、内服している抗生物質や鉄剤などが原因で、下痢になることがあります。特に妊娠中は免疫力の低下やホルモンバランスの変化で、食中毒以外にも感染症を起こしたり、虫歯になったりしやすくなります。治療として抗生物質を使用する場合は、胎児に影響がない薬が処方されるでしょう。ただし、薬の種類によっては、腸内細菌のバランスが崩れ下痢になりやすくなります。

 

また、妊娠中は赤ちゃんの赤血球を作るために2倍の鉄を必要とします。そのため鉄欠乏性貧血になりやすく、鉄剤を飲んでいる方も多いのではないでしょうか。下痢などの消化器系の副作用が少ない鉄剤や漢方薬を使用するケースもあるため、医師に相談してみましょう。

 

下痢になることで赤ちゃんに影響がある?

下痢は、妊娠の過程で起こることもあり、一時的であれば下痢そのものが赤ちゃんに影響が出ることはあまりありません。しかし下痢が長く続いて脱水や食欲不振を起こすと、赤ちゃんに十分血液や栄養が供給できなくなります。下痢になった場合は、早めに受診するなどの対処をとりましょう。

 

また、下痢になることよりも下痢の原因によって、赤ちゃんに影響を起こすことがあります。食中毒を起こしている場合、胎盤を通じて赤ちゃんに感染してしまうかもしれません。厚生労働省 医薬・生活衛生局の「妊娠中・育児中の食中毒予防について」の資料でも、妊婦がリステリア菌に感染した場合に早産や死産になってしまう可能性があると注意喚起されています。

 

妊娠後期の下痢の対処方法は?

下痢になってしまうと、薬を飲んだ方がいいのか、病院に行くべきかなど戸惑うこともあるでしょう。ここでは、妊娠中に下痢になってしまった場合の対処方法をご紹介します。

 

水分補給を行う 

下痢が続くと、脱水症状を起こす可能性があります。妊娠中は血液によって赤ちゃんに栄養や酸素を送るため、多くの水分を必要とし脱水を起こしやすい状態です。下痢によって、水分とともにナトリウムやカリウムなどの電解質も失われてしまいます。

 

水分補給には、電解質を補うことができる経口補水液がおすすめです。スポーツドリンクも電解質が含まれていますが、糖質も多いため、摂りすぎると下痢になりやすくなってしまいます。妊娠糖尿病のリスクも上がるため、飲み過ぎには注意しましょう。

 

自己判断で薬を飲まない

下痢になったから、下痢止めを飲もうと安易に考えるのは危険です。そもそも下痢は、細菌やウイルスなど体にとって異物となるものを排出しようとしている状態です。下痢止めはこの症状を緩和することで、体内に原因菌が残って症状が悪化してしまう可能性があります。

 

自己判断での内服はせず、病院で診察を受けましょう。整腸剤など原因や状態にあった薬を処方してもらって内服するようにします。

 

病院を受診する

特に以下のような症状があるときはすぐに病院を受診するようにしましょう。

 

・嘔吐

・発熱

・下痢が続く

・激しい腹痛

・不正出血

・お腹の張り

 

発熱や嘔吐があるときは、食中毒など感染症の可能性があります。感染症は、赤ちゃんの感染や早産につながる危険性があるため、すぐに病院での診察や治療を受けましょう。

 

下痢が続く場合や激しい腹痛を伴う場合は、消化器系の病気や甲状腺の病気かもしれません。かかりつけの産婦人科以外の病院を受診する場合は、必ず妊娠していることを伝え母子手帳を持参しましょう。

 

また、妊娠後期に、下痢と合わせて腹痛やお腹の張りがあると陣痛でないか心配になるかもしれません。出産予定日が近い場合は、出産時の陣痛の前に起こる前駆陣痛の場合もあります。前駆陣痛の場合、お腹の張りは一時的なもので、慌てて受診する必要はありません。しかし、性器から出血がある場合は早産の兆候の可能性があるため、すぐに病院へ相談をしましょう。

 

妊娠後期に下痢にならないように過ごすには

妊娠後期は、ストレスを感じやすくなったり、免疫力が低下したりと、腸が過敏になりやすい時期です。日々の生活で下痢を起こさないように気をつけましょう。

 

体を冷やさない

妊娠中はホルモンバランスの変化や筋肉量の低下などにより、体が冷えやすい状態です。特にお腹の冷えはそのまま腸が冷えて、下痢を起こしやすくなります。体を冷やさないようにして、温めるようにしましょう。マタニティ腹帯やカイロなどの使用がおすすめです。

 

温かい食べ物や飲み物をとり、内側から温めるのも良いでしょう。カフェインは血管を収縮させる作用や利尿作用があり、体が冷えやすくなるため、摂りすぎに注意してください。

 

湯船に入って体を温めるのもおすすめです。妊娠後期は、体が重たくて動きづらく、転倒が怖いなどで湯船に浸かるのがつらいという方もいらっしゃいます。のぼることや体調が急に悪くなることもあるので、長湯は避けて無理をせず、ぬるめのお湯に浸かるようにしましょう。

 

お腹にやさしいものを食べる

妊娠による味の好みの変化や食欲が増えることで、脂っぽいものや辛いものを食べることもあるでしょう。脂質や糖質の多いもの、香辛料がたくさん含まれているものは胃腸を刺激するため、なるべく食べない方が良いです。

 

お粥やうどん、豆腐など腸の動きを穏やかにするような消化の良いものを選んでください。食材を加熱することで、食中毒を防ぎやすいだけでなく、消化しやすくなって胃腸に負担がかかりにくくなります。

 

ストレスをためないようにする

妊娠後期には、自宅に一人で過ごす時間が増えて気分も落ち込みがちです。家族や信頼できる友人に人に話を聞いてもらうのもいいでしょう。出産に対してプレッシャーがあるときは、出産経験のある友人や母親と話すことで不安を解消したという方もいらっしゃいます。

 

また、気分転換には運動もおすすめです。経過が順調な場合は、妊娠後期でも軽度の運動であれば行って良い場合が多いです。下痢のときは無理をせず休み、体調が落ち着いているときに医師の指示に従って、負担にならない範囲で取り組みましょう。

 

お香やアロマオイルもリラックスにおすすめです。ただし妊娠中は肌が敏感であることや、種類によっては子宮収縮を起こしやすいものもあるため、よく調べて使用しましょう。好きな音楽を聞く、好きな映画を観るなど自分が楽しいと思えることや心地良く感じることをやってみてください。

 

まとめ

妊娠後期に起こる下痢は、赤ちゃんには影響がないことがほとんどです。食事に気をつけたり、体を温めたりするなど生活の中で気をつけることで、下痢を起こしにくくなることもあります。

 

しかし、食中毒が原因である場合は、早産や流産を起こす可能性もあります。下痢が長引くことで脱水状態になる場合や、他の病気が隠れている可能性もあります。嘔吐や発熱などの症状や、違和感があるときはすぐに病院に相談しましょう。

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