Article高齢出産は何歳から?35歳以上の出産のリスクや準備できることを解説
コラム 2025.01.22

妊娠した年齢が高くなると、「難産になるのではないか」「赤ちゃんが病気になってしまうのではないか」と心配している方も多いのではないでしょうか。いくつになっても赤ちゃんを授かったことは喜ばしいことです。しかし、妊娠や出産時の母親の年齢が高くなることで医学的にリスクを伴うことが知られており、不安になってしまうという方も少なくありません。
本記事では、妊婦の年齢が高くなることで起こる母体のリスクや赤ちゃんへの影響、産後のリスクについて紹介します。高齢出産のメリットや出産までの妊娠生活で気をつけることなども紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
高齢出産とは?割合は?
高齢出産とは、医学用語でありませんが、一般的に「35歳以上の妊婦がはじめて妊娠・出産すること」または「経産婦が40歳以上で出産すること」を言います。
女性の出産する年齢は上昇傾向にあります。出産時の母親の年齢別の割合は、以下の通りで、30〜34歳での出生割合が最も高くなります。
母の年齢 | 出生割合 |
19歳以下 | 0.6% |
20〜24歳 | 7.37% |
25〜29歳 | 25.9% |
30〜34歳 | 36.0% |
35〜39歳 | 23.8% |
40〜44歳 | 5.97% |
45歳以上 | 0.19% |
参照:厚生労働省の「令和3年(2021)人口動態統計 母の年齢(5歳階級)・出生順位別にみた出生数」(総数 811,604人)
厚生労働省が公表している「妊産婦の診療の現状と課題」によると1995年では高齢出産が9.5%であるのに対して、2016年では約30%まで増加しています。
医学的に見ると出産時の母親の年齢が上がることによるリスクはありますが、女性の社会進出が進んでいることや、20〜30代の女性の妊娠出産以外の人生の選択肢が広がっていると考えると社会的にポジティブな面もあります。また、不妊治療の技術が進歩しており、年齢が上がりつつも、妊娠できるようになった女性がいることは喜ばしいことです。
高齢出産のリスク
年齢が上がると、体力が落ちるのと同様に、卵子も老化していきます。そのため、流産の割合や赤ちゃんに障害が現れる割合が増えます。ここでは、35歳以上の妊娠中や出産時に起きやすいことについて解説していきます。
流産や難産になりやすい
残念ながら流産は、妊娠全体の15%ほどあると言われており決して少ない数ではありません。
そのうえ、妊婦の年齢が上がると流産の割合が高くなります。
年齢別の自然流産の割合は以下の通りです。
母の年齢 | 自然流産率 |
24歳以下 | 16.7% |
25〜29歳 | 11.0% |
30〜34歳 | 10.0% |
35〜39歳 | 20.7% |
40歳以上 | 41.3% |
また出産時の年齢が上がるほど、難産にもなりやすいと言われています。産道や子宮口は年齢とともに固くなり、赤ちゃんが出てきにくくなるためです。結果的に、出産が長時間になってしまうことで、母体や胎児にも負担がかかってしまいます。
高齢出産の場合は帝王切開の割合も増えます。帝王切開の割合は、全出産の20%ほどですが、35歳以上では30%以上と高くなります。
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの病気になりやすい
妊娠や出産をしていなくとも、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の発症率は年齢が高くなるほど上がります。これは、年齢とともに、血管の弾力性の低下やインスリンの効きにくくなるなど、あらゆる臓器の機能が低下していくためです。
そして妊娠をすると、ホルモンバランスなどの体の変化によって、血糖や血圧が上がりやすくなります。妊娠がきっかけで、高血圧になることを「妊娠高血圧症候群」、糖尿病になることを「妊娠糖尿病」と言います。
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の場合、子宮や胎盤への血流が低下することで赤ちゃんに酸素や栄養が運ばれにくくなることで、低出生体重児や巨大児になるリスクが高くなります。
赤ちゃんの先天性異常の割合が増える
母親の年齢が増えるほど、染色体異常を持つ子どもが生まれる割合が高くなります。
代表的なものとしてあげられるのがダウン症です。正式には「ダウン症候群」(21トリソミー)と呼ばれ、染色体の数に過不足が起こることで生じます。
厚生労働省の「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会報告書」によると年齢別のダウン症の子どもが生まれてくる割合は以下の通りです。
女性の年齢 | ダウン症の子どもが生まれる頻度 |
25歳 | 1/1250人 |
30歳 | 1/952人 |
35歳 | 1/385人 |
40歳 | 1/106人 |
ダウン症は、筋肉の緊張度が低く、知的な発達に遅れが見られます。また、心疾患や消化器疾患などの合併症が起こる可能性があります。そのため、昔はダウン症の子どもは長く生きられないと言われていましたが、医学の進歩により近年では平均寿命も伸びています。
産後の回復に時間がかかる
出産は、どの年代の妊婦でもかなりのエネルギーを消費し、体が元の状態に戻るまで数カ月かかると言われています。難産の場合はより体力を消耗しており、年齢が上がると体力が落ちているため、より産後の体の回復に時間がかかることが多いでしょう。
また赤ちゃんが生まれた後は、大きくなった子宮が元の大きさに戻ります。年齢が高くなると子宮の大きさが元に戻りにくい「子宮復古不全」になる割合が増え、出血量が増えるなどのトラブルにつながります。
産後うつや乳汁分泌不全は、母親の年齢が直接的な原因であるとは一概には言えません。しかし、出産時の体力の消耗や体の回復に時間がかかることが影響しており、不調が増えやすい傾向にあります。
高齢出産のメリット
出産年齢が高くなることについて、リスクばかりがとり上げられがちですが、メリットもあります。悲観的になるのではなく、ご自身の状態を振り返って妊娠を喜び出産に備えると良いでしょう。
経済的なゆとりができる
若いうちに出産や育児をする方に比べて、年齢を重ねてから妊娠した方が働いている期間が長く、経済的に余裕があることが多いでしょう。キャリアアップしていることで、産休明けに同じ職場に復職しやすいというケースもあると思います。
経済的な余裕があると、少し費用がかかっても希望の出産を行える産院を選ぶこともできます。追加費用を払って無痛分娩を選択すれば、出産における痛みを緩和するだけでなく、体力の消耗も抑えられて産後の回復も早くなります。
出産や育児においても心の余裕ができやすい
年齢を重ねると、社会経験も豊富になり、母親自身が精神的に成長している傾向にあります。若いときよりも、出産や育児でトラブルがあっても、落ち着いて柔軟に対処できるという方が多いのではないでしょうか。
また若い妊婦に比べて、周りの友人などが既に出産を経験している人が多いこともあります。困ったときに相談したり、体験談を聞いたりできる人が増え、うまく対処しやすいと言えるでしょう。
高齢出産に向けて準備できること
高齢出産では、妊婦の病気や難産などのリスクが高くなります。しかし、食事や運動、体重の管理などをきちんと行うことで、リスクを下げることができるでしょう。また、妊婦健診や出生前診断を受けることで、異常があっても早期に発見しやすくなります。出産や育児においての情報を収集や準備もしやすくなります。
適切な検査を受ける
妊婦健診をきちんと受けることで、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などにつながる兆候を早く発見しやすくなり、より対処しやすくなります。高齢出産に限ったことではないですが、妊娠が順調だと言われたり、調子が良かったりしてもスキップすることなく定期的に健診を受けましょう。
ただし、妊婦健診での医師の診察やエコー検査だけでは、見つからない疾患もあります。ダウン症候群などの染色体異常症を調べるには、NIPT(新型出生前診断)、羊水検査などを受けなければなりません。すべての異常を見つけられるというわけではありませんが、精度の高い検査もあります。
検査で異常が見つかることは精神的に負担なことですが、生まれる前に障害が見つかって心の準備ができたという方もいらっしゃいます。検査を受けるかどうか、ご家族でよく話し合って検討すると良いでしょう。
健康的な食生活を送り、適正体重を維持する
年齢が上がるほど、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群になりやすい状態です。糖質や塩分、脂質のとり過ぎには注意してください。妊娠中に特に必要とされる、葉酸やカルシウム、たんぱく質や鉄分などの栄養素の摂取を意識しましょう。
バランスの良い食生活を心がけ、適正体重を維持することが大切です。産婦人科診療ガイドラインー産科編2023によると、妊娠中の体重増加については以下の通り基準を示しています。
妊娠前のBMI | 体重増加の目安 |
18.5未満(やせ) | 12〜15kg |
18.5以上〜25未満 | 10〜13kg |
25以上〜30未満 | 7〜10kg |
30以上 | ※個別対応(上限5kgまでが目安) |
妊娠時期や検査データ、体調によっても食事や運動で気をつけることは変わってくるため、妊婦健診での医師のアドバイスを受けて健康管理に取り組みましょう。
体に負担となることを避け、適度に運動を行う
出産や産後の育児には体力が必要です。妊娠前から運動習慣をつけ、妊娠中は体調に気をつけながら無理のない範囲で軽い運動を行うと良いでしょう。
心拍数が上がるような激しい運動や、お腹が圧迫されるような運動は避けます。リフレッシュに向いている散歩や、骨盤が広がりやすいストレッチやマタニティヨガなどがおすすめです。
特に高齢出産の場合、流産や切迫早産のリスクが高くなります。重たい荷物を持つなど体の負担になることは避けましょう。妊娠中は疲れやすいため、十分に睡眠をとり、できるだけ規則正しい生活を心がけましょう。
まとめ
高齢出産と言われる年齢での妊娠や出産は、たしかに医学的なリスクがあり、 不安に感じることもあると思います。だからこそ妊婦健診をしっかりと受けて、体調の変化や病気の兆候を早めに発見して対処することが大切です。
そしてよりスムーズな出産や赤ちゃんの発育のためにも、栄養バランスの整った食事や適度な運動を心がけて体力をつけましょう。
年齢が上がってからの出産は、経済的な余裕や精神的な豊かさなどのメリットもあります。自分らしい妊娠生活や出産・育児の体験を送ってください。