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Article妊婦は飛行機に乗っても良い?搭乗可能な時期や胎児への影響、注意点

コラム 2025.01.22

妊婦が飛行機に乗る時の注意点

里帰り出産や急用でどうしても妊娠中に飛行機に乗らなければならないということもあるでしょう。妊娠中でも飛行機に乗れないといった決まりはありません。しかし、妊娠時期によっては、搭乗にあたって医師の診断書が必要になる場合や、飛行機の利用を控えた方が良い場合もあります。また搭乗するとしても、妊婦や赤ちゃんへ影響はないか心配になるかもしれません。

 

本記事では、妊娠中に妊婦が飛行機に乗ることができる時期や、飛行機に乗るときの影響や注意点について解説します。主治医への相談や服装、マタニティサービスなど詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

妊婦でも飛行機に乗って良い時期は? 

飛行機に乗るなら、妊娠が安定した12〜28週頃が良いと言われています。妊娠の経過や体調は人それぞれのため一概には言えませんが、この時期であれば、妊娠初期の体調の変化やつわりの症状が落ち着いてきている方も多いでしょう。ただし体調が優れない場合、無理は禁物です。飛行機による気圧の変化などで搭乗中に体調を崩したり、悪化したりする可能性もあります。お腹が張りやすいなど妊娠状態には個人差もあるため、主治医に相談をして決めましょう。

 

妊娠後期はお腹が大きくなり血流が悪くなりやすいため、搭乗には適していない期間です。里帰り出産を予定している場合、妊娠後期に飛行機に乗って帰省しようと考えている方もいるでしょう。しかし、出産を控えた時期の搭乗を計画している場合、切迫早産の兆候が見られて飛行機に乗れないというリスクもあります。どうしても飛行機に乗らなければならない場合は、主治医と相談の上、なるべく妊娠28週、遅くとも32週までに乗れるように計画すると良いでしょう。特に出産予定日から28日以内(国際線は36日以内)については、国土交通省でも航空会社で搭乗の条件があると紹介されています。

 

搭乗にあたり注意が必要なケース

・出産予定日を含め28日以内に入っている場合

・予定日がはっきりしない場合

・双子以上の妊娠をされている場合

・早産の経験がある場合

 

上記に該当する場合は、利用する航空会社に搭乗が可能か、医師の診断書などは必要ないか事前に確認するようにしましょう。

 

妊婦や胎児に与える影響 

妊娠週数や体調から飛行機に乗ることができそうな場合でも、飛行機の利用を決める前にどんな影響があるか知っておきたいところです。機内では長時間にわたり同じ姿勢で過ごす必要があり、上空では気圧の変化や放射線など体に与える影響は少なからずあります。ここでは、飛行機に乗ることで妊婦や胎児にどのような影響があるか解説します。

 

エコノミークラス症候群(深部血栓症)

妊婦が飛行機に乗る際に注意したいのがエコノミークラス症候群と呼ばれる深部血栓症です。深部血栓症とは、飛行機などを利用する際に長い時間、同じ姿勢で座り、足の血管の血液が固まりやすくなることで起こります。立ち上がったときや歩き始めたときに血流の流れに乗って、血栓と呼ばれる血の固まりが肺まで移動して血管を詰まらせることで、呼吸困難や心肺停止を起こす可能性があります。

 

妊娠をすると、出産時の出血に備えて女性ホルモンのエストロゲンの分泌が増え、血液が固まりやすくなります。また、お腹が大きくなることで子宮が静脈を圧迫し、血栓が生じやすい状態です。特に機内は乾燥していて体の水分が蒸発しやすい環境のため、注意が必要です。

 

めまいや立ちくらみ、吐き気

妊娠中は、ホルモンバランスの変化や赤ちゃんの成長に伴って、吐き気や頭痛、貧血、疲れやすさなど不調が出やすい状態です。飛行機では上空での気圧の変化や酸素濃度の低下により、これらの症状がひどくなることがあります。天候によっては機体が揺れることもあり、気分が悪くなることもあるでしょう。

比較的安定している妊娠中期(16週〜27週頃)に飛行機への搭乗を予定している方もいるでしょう。この時期、つわりの症状は落ち着いていることが多いですが、赤ちゃんの発育に必要な鉄分などの栄養素が胎盤を通して赤ちゃんに送られるため、妊婦は貧血になりやすい状態です。あわせて子宮への血流量が増えるため、脳への血流が低下しやすくめまいや立ちくらみなども起こしやすくなるため注意しましょう。

 

放射線の影響

「飛行機に乗る前に金属探知機のゲートを通っても大丈夫か」 「上空での放射線の影響はないのか心配」という方もいらっしゃるでしょう。手荷物検査で使用される金属探知機からは、放射線は照射されていません。しかし、上空は地上に比べて放射線量が高くなっています。

 

0.1グレイ以上被爆すると妊娠初期で流産の危険性が高まり、それ以降の被爆では赤ちゃんの器官形成や発達に異常を来たす可能性があると言われています。0.1グレイはγ線やX線を一度に100mSv(ミリシーベルト)受けた場合に相当すると言われているため、100mSv以上の放射線を浴びるのは危険と覚えておくと良いでしょう。

 

環境省によると、東京からニューヨークの航空機旅行を往復した際に被爆する放射線量は0.11〜0.16mSvとされています。つまり、一度や二度飛行機に乗るだけであれば、胎児にはほぼ影響がないと考えて良いでしょう。

 

飛行機に乗る上で注意しておきたいポイント

飛行機を何度も乗るのでなければ、放射線の影響は少なく、エコノミークラス症候群やめまい、吐き気などの症状には注意が必要であることがわかりました。ここでは、これらの症状が起こらないような予防方法など飛行機に乗る上で注意しておきたいポイントを解説します。

 

こまめに水分を取る

機内は乾燥しやすく体の水分が失われやすい状態で、血液が固まりやすくなります。トイレに行くのも大変なこともあるため水分摂取を控えてしまいがちですが、こまめに水分補給するようにしましょう。

 

ただし、カフェインには利尿作用があるため、体に水分を補給するという意味では逆効果です。コーヒーや緑茶は控えてなるべく水やカフェインレスの飲み物を飲むようにしましょう。嘔吐を繰り返している方は脱水状態になりやすく、血液が固まりやすくなるためより水分を取る必要があります。

 

移動しやすい席を予約する

極力、移動しやすい通路側やトイレの近くの席を予約すると安心です。体調が安定していても機内は通常の環境と異なり、急に体調が悪くなる可能性もあるため、席に着いたらエチケット袋の場所を確認しておきましょう。


また、機内の設備の影響などで予告なく座席が変更になる場合もあります。せっかくトイレに近い席を予約しているのに、遠い席になることがないように予約時に妊婦であることを伝えておきましょう。

 

また、非常口の横の席は、航空会社によって緊急脱出時に乗務員とともに機内で全体の援助を依頼されることがあります。妊婦自身はもちろん、万が一のときは一緒に乗る家族が妊婦の介助をできるように、家族も非常口のある列の席は選ばないようにします。航空会社によって規定が異なるため、事前に確認すると良いでしょう。

 

ゆるめの体を締め付けない服装を選ぶ

締め付けが強い服装は、圧迫感があり頭痛や吐き気などの不調につながりやすく血流も悪くなりがちです。症状が現れたときにもリラックスができないため、お腹が大きくなる前でもゆったりとした楽に過ごせる服を着ると良いでしょう。シートベルトを着用する際は、お腹を締め付けないように低めの位置につけます。

 

ただし、体が冷えると、血流が滞り血栓ができやすくなるだけでなく、腰痛など不調を起こしやすくなります。ワンピースは過ごしやすい服装ですがそれだけでは冷えやすいため、マタニティボトムスや腹巻きなどを活用し、薄着は避けましょう。

 

また、フライト中など姿勢を変えるのが難しいときは、血液が固まるのを予防してくれる弾性ストッキングがおすすめです。弾性ストッキングは普通のストッキングよりも着圧が強く、深部血管の血流を早くして血栓ができるのを予防してくれます。着圧が強ければ強いほど効果が高いというわけではありません。効果を発揮するためには、自分の足のサイズにあったものを選び、ずれやしわにならないように着用しましょう。

 

マタニティサービスを利用する

航空会社では、搭乗にあたりマタニティサービスが用意されていることが多いため、無理せずにサポートしてもらいましょう。予約時に伝えておき、マタニティマークをつけておくとサポートを受けやすくなります。マタニティマークは持っている人が多いと思いますが、航空会社でも提供していることがあるので必要であれば利用すると良いでしょう。

 

混雑時に長時間にわたって並ばないで済むように、空港では優先カウンターで手続きができ、搭乗時も時間帯を分けて搭乗できることが多いです。重たい荷物があるときは電動カートを利用し、荷物の上げ下ろしもサポートしてもらうと良いでしょう。

 

また、クッションやブランケット、お腹が大きい妊婦のためにシートベルトの延長ベルトの貸し出しを行っている場合もあります。少しでも楽な姿勢が取れるように利用できるか確認しておくと良いでしょう。

 

まとめ

妊娠中でも飛行機に乗ることは可能です。しかし、妊娠が安定せず体調も崩しやすい妊娠初期や、お腹が大きくなってきた妊娠後期は搭乗には適していません。安定している時期でも妊娠の状態にも個人差があるため、必ず主治医に相談しましょう。搭乗時には母子手帳を持参し緊急の連絡先もすぐに取り出せるように準備しておきます。

 

里帰り出産を希望している場合は、なるべく早めに出産する病院で診察を受けた方が妊娠の経過もわかってもらいやすくなります。仕事の都合などでなるべく帰省時期を遅らせたいという方もいらっしゃるかもしれませんが、より安心して移動や出産を行うには妊娠中期の搭乗がおすすめです。妊娠中の帰省や旅行などは、移動に関しても、より計画的に行い無理なく過ごせるようにしましょう。

 

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