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Article無痛分娩の割合は?日本で普及しない理由と無痛分娩のためにできること

コラム 2024.10.11

妊娠中の女性

 

近年、出産の痛みを緩和する無痛分娩の認知度が上がっており、無痛分娩を選択したいという声が増えています。しかし周りに無痛分娩を経験した人がいない、対応している施設がないなど、普及していないと思った方もいるかもしれません。

 

実は、無痛分娩の先進国と言われるフランスほど日本では無痛分娩が行われていません。本記事では、日本で無痛分娩を選ぶ人の割合はどれくらいか、普及しない理由などをご紹介します。なかには、無痛分娩に対応している施設が近くにない、費用がかかるなど選びたくても選べない方もいらっしゃいます。普及しない理由を知れば、あらかじめ対策して無痛分娩を受ける準備をすることができます。

 

無痛分娩を選ぶ人の割合は?

厚生労働省により発表された令和2年医療施設調査・病院報告の概要によると、日本全体での無痛分娩の割合は8.5%(一般病院9.4%、一般診療所7.6%)でした。

 

分娩件数の年次推移

無痛分娩が認知度や関心が高まっていて、無痛分娩という言葉を知らないという人は少数ではないでしょうか。しかし、実際に友人や知人に無痛分娩を経験したという方があまりいないというケースも多いと思います。

海外での無痛分娩を選ぶ人の割合は?

日本ではあまり普及していない無痛分娩ですが、海外では自然分娩よりも無痛分娩の方が選ばれているという国もあります。アメリカでは7割以上、フランスでは8割以上、無痛分娩が行われています。

欧米諸国で、無痛分娩を選ぶ人が多い理由の一つとして費用が関係しています。アメリカやフランスでは、自然分娩だけでなく無痛分娩にかかる費用が医療保険の適用です。

 

ちなみに、アメリカのミシガン州の日本人の無痛分娩率は63.2%というデータがあります。たしかに、アメリカで暮らす日本人は、日本で暮らす日本人と多少文化や風習が異なります。とはいえ、日本人も保険診療で受けられる、対応している施設があるなら無痛分娩を選んでいるという人もいるのではないでしょうか。

日本で普及しない理由は?

日本では、無痛分娩にかかる費用が自費であるとお伝えしましたが、無痛分娩の割合が低い理由は他にもあります。ここでは日本であまり無痛分娩が行われていない理由について解説していきます。

 

対応できる医療機関が少ない

残念ながらどこの病院でも無痛分娩を受けられるというわけではありません。無痛分娩を行うことができる施設はまだまだ少なく、希望していても自宅の近くに受け入れ施設がないという方もいらっしゃいます。

JALA(無痛分娩関係学会・団体連絡協議会)に掲載されている厚生労働省の「わが国の無痛分娩の実態について」によると、2020年9月の1ヶ月間に無痛分娩を実施した施設は505件でした。これは、分娩を取り扱う施設全体の26%に留まります。

医療機関にとって、無痛分娩を導入するのは設備等に費用がかかり、麻酔科医など体制を整えるのが大変なことです。特に無痛分娩では、出産と麻酔の両方の管理が同時に必要となります。麻酔科医が不在で、産科医が麻酔の管理も兼任して行うこともありますが、産科医の負担が多くなります。そのため、なかなか無痛分娩を導入できない施設や、実施できる件数を増やせない施設もあります。

 

無痛分娩だけでなく出産にかかる費用が自費

日本では、出産そのものや無痛分娩にかかる費用において保険は適用されないため全て自己負担になります。厚生労働省の令和5年度「第167回社会保障審議会医療保険部会」の「出産費用の見える化等について」によると通常分娩にかかる費用の平均は、48.2万円でした。

出産費用の推移

 

無痛分娩の場合、通常分娩の費用に追加して15〜20万円ほどかかるのが相場です。出産後は、子育てに費用がかかります。費用の影響で、気軽に無痛分娩を選べないというのも普及していない理由の一つです。

 

痛みを経験した方が美徳という考えが残っている

日本ではまだ、「お腹を痛めて産んだほうが良い母親になれる」という勘違いや考え方が残っています。妊婦自身が無痛分娩を希望していても、家族にそのような考え方の方がいて反対されたという声もあります。出産時の痛みによって愛情ホルモンの分泌量に変化があるといったデータはなく、科学的な根拠はありません。
医療は日々進歩しており、治療で行われる手術のほとんどが麻酔を使用します。出産だけ麻酔薬を使用せずに行われるというのは、医学的な要素というよりもこういった考え方が影響していると思われます。

 

周りに無痛分娩を経験した人がいない

日本での普及率が低く、周りに無痛分娩を経験した人がいないという点も、無痛分娩を選ぶハードルが上がっている理由になっています。あまり一般的になっていないことから、無痛分娩のイメージが湧かず、「特別なこと」であると思われがちです。
無痛分娩は、出産時の痛みを緩和するだけはありません。緊急時の対応が早く行えることや、体力や気力の消耗を抑えられるということはそれほど知られていないでしょう。周囲に経験した人が居なくとも、あらかじめ情報収集しておくことでイメージがつきやすくなります。

無痛分娩を選ぶために事前にできること

日本では、あまり無痛分娩が普及していないとはいえ、出産時の痛みを緩和したいというのは自然なことです。ただし、対応している施設が少なく、費用が追加でかかるため、準備を怠ると無痛分娩を受けられないこともあります。ここでは、納得のいく無痛分娩を受けるために事前にしておくと良いことを、注意点を踏まえてご紹介します。

 

対応している医療機関を早めに探す

どこの病院でも無痛分娩が行えるわけではありません。施設によって予約数を限定している、妊娠週数がかなり経過していると受け入れをしていない場合もあります。妊娠がわかったら無痛分娩に対応している施設を探して、早めに予約しておくようにしましょう。

都市部は無痛分娩を実施している施設が比較的多い傾向にあり、地方では少ないなど地域差があります。特に、里帰り出産を希望している場合は、あらかじめネットなどで調べておきましょう。

 

また、陣痛や破水が起こった時のことを考えて、すぐに来院できるように自宅からなるべく近い施設を選ぶのが良いでしょう。無痛分娩には、陣痛が来た時に麻酔薬を投与して行う自然無痛分娩と、あらかじめ出産日を決めて行う計画無痛分娩があります。施設によってどちらの対応を行っているか、夜間や休日でも無痛分娩を受けることができるかなども確認しておきましょう。

 

早めに情報収集し家族にも理解を得る

出産や無痛分娩についてあらかじめ情報収集をすることで、メリットや注意点を十分に理解することができます。初産のときは、無痛分娩を選択肢に入れておらず、1人目の出産の際に痛みが辛かったという経験を経て、2人目や3人目の出産のときに無痛分娩について調べるという方も多いようです。

 

無痛分娩は、出産時の痛みを抑えるだけではありません。帝王切開が必要なった場合の緊急時の対応がすぐ行うことができます。そのため、双子など多胎妊娠の場合や逆子の場合などは安全性の観点で無痛分娩を医師から勧められることもあります。また、体力が温存できると、産後の育児にも集中しやすくなり、早く職場へ復帰したいという方にも選ばれています。

 

また、妊婦自身が無痛分娩について理解していると、周囲の理解も得やすくなり、より無痛分娩を選択しやすくなります。病院は、無痛分娩について説明会を行っている場合もあり、配偶者が一緒に参加できるケースもあるため、確認しておきましょう。

 

無痛分娩のメリットや注意点について詳しく知りたいという方は、ぜひこちらの記事も参照してください。

無痛分娩のメリット・デメリット

無痛分娩や出産の費用計画を立てておく

無痛分娩では、出産費用に追加して15〜20万円ほどかかり、全て自己負担になります。費用の負担によって、無痛分娩を選ぶかどうか迷っている方は、早めに費用の計画を立てておきましょう。

 

出産にかかる費用について、手当金を受け取ることもできます。出産育児一時金は、国民健康保険に加入している場合に受けることができ、子ども一人につき50万円支給されます。また、企業に勤めている方は、産休中の給与の約2/3を出産手当金として受け取ることができます。

 

ただし、出産育児一時金は、産後2〜3ヶ月の受け取りとなります。医療機関に直接支払われる直接支払い制度もありますが、自治体や医療機関によって対応が異なります。自分が対象となるかどうか、いつ受け取れるかなど早めに確認しておきましょう。

 

出産や無痛分娩にかかる費用や手当について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

無痛分娩にかかる費用は?追加でかかる費用や利用できる制度も解説

 

まとめ

日本では、無痛分娩の認知度や関心が高まっているにも関わらず、あまり普及していません。普及していない理由は、無痛分娩にメリットがないというよりも、医療体制や費用が影響しています。

 

無痛分娩に対応している施設は、まだまだ数が多くはありません。自宅の近くの施設や夜間や休日も対応している病院となるとさらに数は少なくなります。無痛分娩を希望する場合は、早めに病院を予約しましょう。納得のいく無痛分娩を受けるためには、無痛分娩について知識をつけ、家族にも理解を得るなどなるべく早く準備しておくことが大切です。

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