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Article帝王切開後に起こりうる5つの後遺症|育児ストレスの関係性についても解説

コラム 2024.10.09

帝王切開での出産を控えている妊婦さんのなかには「帝王切開の後遺症はないのかな?」「帝王切開の後遺症は予防できる?」と疑問や不安をかかえている人もいるでしょう。

帝王切開とは経腟分娩が難しい場合に、母子の安全を第一に考え麻酔下でお腹を切って赤ちゃんを取り出す手術方法です。

この記事では帝王切開後に起こりうる後遺症や予防・対処法について解説します。

帝王切開後の日常生活で気を付けることや、次の妊娠・出産への影響についても解説するため、帝王切開で出産予定の方は参考にしてみてください。

帝王切開で起こりうる5つの後遺症と予防・対処法について

帝王切開は麻酔を使用し子宮を切開する手術のため、切開による身体的な後遺症や麻酔の副作用が現れる可能性があります。

帝王切開後に起こり得る後遺症は、次の5つです。

  1. 傷あとの炎症やケロイド
  2. 帝王切開瘢痕(はんこん)症候群
  3. 手術部位の癒着
  4. 血栓塞栓(けっせんそくせん)症
  5. 麻酔の副作用

それぞれの症状と予防や対処法について解説します。

1. 傷あとの炎症やケロイド

帝王切開はお腹を切開するため、切開部分を縫合したあとに傷あとが残ります。

一般的に傷口は3日程度で閉じますが、皮膚の下では炎症が続き肌色に近い傷あとになるには約3ヵ月から1年必要です。

傷が治る過程で体質や傷あとに物理的な刺激が加わると、炎症が継続し赤く盛り上がる可能性があり、その状態を肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)またはケロイドと呼びます。

ケロイドを引き起こす要因には、次のようなものがあります。

・体質の要因:女性ホルモンや高血圧

・物理的な刺激要因:傷に対する摩擦や傷がひっぱられる刺激、テープをはがす際の刺激

体質要因を予防するのは難しいですが、物理的刺激の予防は可能です。

特に皮膚を伸ばさないようにすることが重要で、最低3か月ほどは傷あと専用のテープを使用するのが推奨されます。テープの使用で衣服や下着との摩擦も防げます。

2. 帝王切開瘢痕(はんこん)部症候群

子宮を切開した影響で帝王切開後に不正出血や月経異常を起こすことがあり、関連する症状を総称して帝王切開瘢痕部症候群といいます。

切開した子宮の筋肉がうまく癒合せず、子宮の壁が薄くなったり子宮内に粘液が溜まったりする

状態で、不妊の原因にもなる可能性があります。

帝王切開瘢痕部症候群の具体的な症状は、次のとおりです。

・不正出血:生理の期間以外に出血する

・月経困難:強い下腹部痛や腰痛、吐き気や頭痛がある

・過長月経:生理の期間が8日以上続く

また帝王切開瘢痕部症候群のリスクには、次のような要因があります。

・妊娠糖尿病

・肥満

・子宮後屈(子宮が背中側に傾いている状態)

・複数回の帝王切開術や子宮口開大後の緊急帝王切開術 

帝王切開瘢痕部症候群の予防は難しく、治療としては低用量ピルを使用した月経困難症や不正出血のコントロール、手術療法があります。

3. 手術部位の癒着

帝王切開に限らず一般的な手術後の後遺症として、手術で傷ついた組織を治そうとする作用が働き、組織同士が癒着してしまうことがあります。

癒着によるトラブルとして、次のような可能性があります。

・下腹部痛

・不妊症

・癒着性の腸閉塞

・将来的に再び手術になった場合、術操作が困難

次回も帝王切開が必要な場合や何らかの手術になる可能性を考慮し、癒着を防ぐための処置が増えています。

4. 血栓塞栓(けっせんそくせん)症

血栓塞栓症は「エコノミークラス症候群」としても知られており、血管のなかにできた血液のかたまりが、血流をとめたり血管につまったりする病気です。

出産時は出血から母体を守るために血液の凝固機能が自然に高まる性質があるため、妊娠中は血栓塞栓症のリスクが高まります。

帝王切開は経腟分娩に比べてベッドの上での安静時間が長いため、血栓症の発生頻度は経腟分娩に比べて約22倍高まるといわれています。

帝王切開後の肺血栓症を予防するために、以下のことが推奨されています。

・手術前から弾性ストッキングを着用する

・手術時には脱水に留意する

・脚をマッサージする

・帝王切開後はやめに歩行開始する

静脈に血栓ができ何らかの拍子に血流にのって血栓が肺に到達すると、肺塞栓症を引き起こし命にかかわる可能性があります。

分娩後に血栓症のリスクは低下しますが、分娩後6週間は注意が必要です。

5. 麻酔の副作用

帝王切開ではお腹にメスを入れるため、麻酔を使用します。

使用される麻酔は大きく分けて「全身麻酔」と「局所麻酔」の2種類で、基本的に局所麻酔である「硬膜外(こうまくがい)鎮痛法」が選択されます。

硬膜外鎮痛法は腰骨から細い針を刺し、細い管を通して麻酔薬を注入する方法で、下半身だけに麻酔がきくためお母さんの意識は保たれています。

全身麻酔が選択されるケースは、緊急での帝王切開や硬膜外鎮痛が適さない場合です。

硬膜外麻酔にはよく起こる副作用や合併症として、次のようなものがあります。

・足の力が入りにくい、感覚が鈍くくなる

・尿意が弱い、排尿しづらい

・血圧が下がる

・かゆみがでる

・高体温になる

背中の神経には足の感覚や排尿に関わる神経もあるため、麻酔の効きかたによって症状が出る場合がありますが、多くのケースは徐々に改善します。

帝王切開と育児ストレスの関係性について

ここまで帝王切開後の身体的な後遺症の可能性について解説しましたが、帝王切開と産後の育児ストレスとの関連性についても解説します。

2023年の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」によると、帝王切開は育児ストレスの増大と関連性があるという結果が報告されています。

帝王切開で育児ストレスが増大する要因としては、次のようにいわれています。

・帝王切開後の傷の痛み

・帝王切開で出産した赤ちゃんにぜん息などの小児疾患がやや多いことへの不安

・経腟分娩を希望していたが、帝王切開になったことを悔やむ気持ち

帝王切開で出産する背景にはさまざまな理由がありますが、母子の安全を第一に選択されます。

帝王切開で出産したことを母親自身がネガティブに捉えないような、周囲の声掛けや配慮も重要です。

また母親だけが育児ストレスを抱えることのないよう、家族や育児に関わる人が帝王切開後の心身への影響を理解し、家族の育休取得やサポート体制を整えることが大切です。

帝王切開後の日常生活で気を付けること

経腟分娩の場合は出産後4~5日で退院しますが、帝王切開の場合は平均7~9日目に退院します。

帝王切開はお腹の傷があるため、退院後の日常生活において次のような点に注意しましょう。

・傷の痛みが強くなるため、お腹に力がかかるような動作を避ける

・お腹の傷が圧迫されるような衣服をさける

・傷あとの炎症やケロイドを予防するため、摩擦や伸展を避け専用の傷テープを使用する

・傷からの出血、赤み、ジクジクするような症状は医師へ相談する

また帝王切開に限らずですが、出産後は周囲のサポートを受けながら心身ともに決して無理をしすぎないことも重要です。

帝王切開後の妊娠・出産について

帝王切開で出産した場合、次の妊娠は6か月~1年以降の期間が推奨されいますが、理由としては次のとおりです。

・陣痛の際に子宮が破裂するリスクがある

・妊娠糖尿病や早産のリスクが高まる

また一度でも帝王切開で出産した場合、次の出産を経腟分娩または帝王切開にするか、十分に医師と検討する必要があります。

帝王切開で出産した方が、次に経腟分娩を試みることをTOLAC(Trial of labore after cesarean elivery)といいます。

TOLACを選択した場合、帝王切開の後遺症は回避できますが子宮破裂のリスクがあります。

一方、再び帝王切開を選択した場合、前回の手術による癒着の影響で手術中の操作が難しかったり時間がかかったりするデメリットがあります。

子宮破裂のリスクを考慮すると、母子の命の安全性を第一に再び帝王切開を選択する施設が多いようです。

またTOLACを希望する場合、対応可能な施設は限られており分娩中の管理や緊急時に対応可能な病院で行うのが望ましいでしょう。

まとめ

帝王切開は母子の安全を第一に選択される分娩方法ですが、傷あとの痛みや炎症、月経異常・手術部位の癒着や血栓塞栓症などの後遺症が残る場合があります。

また帝王切開は麻酔を使用するので、麻酔による頭痛やしびれなどの副作用が現れる可能性もあります。

手術後の傷あとについては、出産後1年ほどは専用の傷テープや傷あとに摩擦や伸展の負担をかけない生活が大切です。

帝王切開は育児ストレスとの関連性が報告されており、次の妊娠・出産についてもしっかり医師と相談してすすめていきましょう。

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