Article無痛分娩は痛みがないって本当?痛みの程度やメリットについて解説
コラム 2024.08.30
出産時の痛みが抑えられる無痛分娩を選びたいと考える方はたくさんいらっしゃるでしょう。しかし、「本当に痛みがないのか心配」という方も多いのではないでしょうか。いつ麻酔薬が投与されるのか、痛いときに麻酔薬を追加できるのか気になることもあると思います。
本記事では、出産時に感じる痛みがどのようなものか、痛みの強さ、痛みを緩和した時のメリットについて解説します。麻酔薬が投与されるタイミングや注意点など気になる内容をまとめていますので、ぜひ無痛分娩を選択する参考にしてください。
無痛分娩ではどれくらい痛みが抑えられる?
無痛分娩では、麻酔薬を投与することで出産に伴う痛みを抑えることができます。「硬膜外麻酔」と呼ばれる方法がとられることが多く、背中に針を刺してチューブを挿入し、チューブから麻酔薬を投与します。
無痛分娩では、下半身にのみ麻酔が効いている状態であるため、意識や感覚もあり全く痛みがないということではありません。そのため「和痛分娩」とも呼ばれますが、通常分娩の痛みを1/10〜3/10程度に抑えることができます。出産時の痛みは「鼻からスイカが出るような痛み」と言われるため、緩和するだけでもかなりのメリットがあります。
出産に伴う痛みとは?
生まれる前の陣痛、まさに赤ちゃんが生まれるときの痛み、産後の痛みなど出産には、それぞれの過程で痛みが伴います。下腹部や腰、会陰部など痛む部分や痛みの強さも変わってきます。
入院前の前駆陣痛と本陣痛
本格的な陣痛が来る前に、妊娠36〜40週前後から下腹部や腰の痛み、お腹の張りが始まります。前駆陣痛と呼ばれるもので、時間が経つと治まり、痛む間隔も不規則です。本陣痛に比べて痛みもまだ弱く、「生理痛のような痛み」「下痢のようなお腹の痛み」などと例えられます。
出産が近づくと、痛む間隔が規則的になり痛みがだんだんと強くなっていきます。痛みが起こる間隔が10分以内になると、本陣痛と呼ばれるいわゆる「陣痛が始まった」状態になります。陣痛が始まると、病院に連絡して入院することになります。
入院してからいきみ始めるまで痛み
本陣痛が始まってから、子宮口が全開になっていきみ始めるまで初産婦で10〜12時間、経産婦で4〜6時間ほどかかります。子宮口の開きが0〜3cmぐらいの間は、痛みがあってもまだ歩くことや食事する余裕のある方も多いでしょう。子宮口が5cmくらい開いてくる頃には、我慢できず余裕がなくなる方が多いようです。8cmくらい開いた頃には、「会話もできないほど痛い」「叫びたいほど痛い」と言われるほど痛みが強くなります。
無痛分娩では、一般的に陣痛の間隔が5〜10分間隔、子宮口が3〜5cmほど開いた頃に麻酔薬の投与を開始します。つまり陣痛が始まって入院するころは、まだ麻酔薬を投与してないため、通常分娩と同じように痛みがあります。「我慢できないほどの強い痛み」を感じる頃の子宮口が5〜8cmほど開いたときには麻酔薬が注入されていることが多いでしょう。
いきみ初めてから赤ちゃん生まれるまでの痛み
子宮口が完全に開くと、分娩室に入っていきみ始めます。麻酔薬のない通常分娩では、お腹や背中の痛みはかなり強くなっており、息も荒くなってきます。いきみ始めて赤ちゃんの体の一部が子宮から出くると、骨盤のあたりや外陰部や肛門周囲も痛くなります。
まさに赤ちゃんが生まれるときには、外陰部や肛門周囲の痛みがかなり強くなります。赤ちゃんが降りてくるため、痛みとあわせて強く引っ張られるような感覚や圧迫を感じる方が多いです。
生まれた後の痛み(後陣痛)
出産が終わり胎盤などの娩出が終わると、子宮が元の大きさに戻ろうとすることで痛みが生じます。後陣痛と呼ばれ、出産が終わってから3日間ほどがピークで1週間ほど続きます。後陣痛は、授乳すると子宮収縮が促されるため、痛みが強くなります。
無痛分娩の際は、出産が終わって2時間ほどで落ち着いたときに麻酔用のカテーテルを抜きます。そのため、後陣痛に対しては麻酔薬の投与は行いません。通常分娩と同じように、痛みが強い時は、内服薬や座薬で対応します。
麻酔薬の投与の流れとタイミング
まず入院をしたら、心拍のモニターを装着したり点滴を投与して、麻酔薬を投与する準備を行います。麻酔薬は一度注射したら終わりではなく、追加できるように背中から麻酔用のチューブを挿入します。チューブの挿入の処置が痛くないように局所麻酔薬の注射をするため、注射の痛みはあります。
処置が終わり、子宮口が3cm〜5cmほど開くと麻酔薬を投与し、30分ほどで麻酔薬が効いてきます。最初に投与した麻酔は、1〜1時間半ほどで効果が弱くなるため、少しずつカテーテルから麻酔薬を注入します。麻酔が切れてしまうと言うことは基本的にありませんが、痛みには波があります。
痛みが強くなったら声をかけて麻酔薬を調整してもらいましょう。病院によっては、痛いときに自分でボタンを押して麻酔薬が追加できるようになっていることもあります。その場合、ボタンを押しすぎても麻酔薬が過剰にならないように調整がされています。
無痛分娩では処置に伴う痛みも抑えられる
赤ちゃんが出てくるときに会陰がうまく伸びず、裂傷してしまう可能性があるときなどに切開を行うことがあります。また切開した傷は、出産後すぐに縫合します。切開や縫合には痛みが伴うため、局所麻酔をしてから行うことが多いのですが、分娩の進みが早く緊急性が高いときなどは麻酔を行わないこともあります。
無痛分娩の場合は、そもそも硬膜外麻酔を行っているため、新たに麻酔をしなくとも会陰切開や縫合時の痛みも緩和できます。会陰切開以外にも内診に伴う違和感など、処置の痛みも軽減できるというのは無痛分娩のメリットです。
痛みを抑えるメリットや注意点
出産の強い痛みを抑えられるなら、それだけ十分無痛分娩をする価値があると考える方が多いでしょう。無痛分娩で痛みを抑えることは、ただ単に「痛くない」というだけではなく、メリットや注意点もあります。
リラックスして出産に臨める
出産は命懸けで、痛み以外にも、いきめるか、赤ちゃんが健康的に生まれてくるかなど心配なことがたくさんあると思います。出産時は、痛みや緊張で余裕がなく「周りの声が聞こえない」「何が何だかわからなかった」という方もいらっしゃるかもしれません。体に力が入って産道も固くなることで赤ちゃんも出てきづらくなることもあります。
無痛分娩により、痛みを緩和した状態で出産できると初めからわかっているだけで精神的な負担が減りリラックスしやすくなります。リラックスすることで助産師の合図を聞きながらいきむことに集中しやすくなるでしょう。赤ちゃんとの感動的な対面も通常分娩より余裕を持った状態で迎えられると感じる方も多いようです。
体力の消耗を抑えられるため産後の回復が早い
痛みを我慢して出産することは、気力や体力をかなり消費し、フルマラソンを走り切るくらい疲れると言われています。産後、出産前の体力に戻るまで数ヶ月かかることが多く、座るのも疲れるという方も少なくありません。そのような状態で、授乳やおむつ交換など慣れない育児をするのは大変でしょう。
無痛分娩で、痛みが緩和されると体力の消耗を抑えられて、産後の回復も早くなります。赤ちゃんのお世話に集中したい、産後早く元の生活に戻していきたいという理由で無痛分娩を選ぶ方も増えています。
痛みを抑えるデメリットや注意点
痛みを抑えるために麻酔を行うことで、陣痛が弱くなり分娩の時間が伸びることがあります。分娩が長期間になると、胎児にとって負担が大きくなり、産婦も疲れてきます。しかし、そうならないように陣痛促進剤を使用する、吸引分娩を行うなどの処置を行って対処します。
なかには、痛みで苦しんだからこそ感動する出産体験になる、良い母親になれると考える方もいらっしゃいます。そのような場合、無痛分娩が「ものたりない」と感じるかもしれません。出産に関する価値観はそれぞれのため、一概には言えませんが、痛みによって愛情が湧くといった医学的根拠はないとされています。痛みを緩和して出産したいという考え方が一般的になってきており、デメリットに感じないという方が多いでしょう。
まとめ
無痛分娩では、出産時の激しい痛みをかなり緩和することができます。陣痛が始まった時点では麻酔薬の投与が始まっていないため、通常分娩と同じように痛みがあります。出産時も全く痛みがないとは言えませんが、多くの人が「我慢できない」と思う痛みになる前に、麻酔薬を投与して緩和します。
痛みを我慢せずに緩和することで、心に余裕を持ってリラックスして出産に臨みやすくなるでしょう。産後の回復が早く育児に集中しやすいというメリットもあります。出産時の痛みに耐えられるか自信がないという方はもちろん、興味がある方はぜひ無痛分娩を検討してみてください。